« 【恋の小話】星の川辺で-11- | トップページ | 町に人魚がやってきた【目次】 »

【大人向けの童話】どくろトンネル-2-

←前へ次へ→
.
 サトルとしては「下らねぇ」で無視しても良かったが、弱虫呼ばわりは癪に障る。ちなみに当の“幽霊さん”は、走る兵隊の姿であったり、「腹減った、かか、飯」という声が聞こえたり、という。(かか=お母ちゃん、の意)
「判ったよ。つきあってやるよ。いつ行くんだよ」
 サトルが観念したように言うと、タカシはニヤニヤ。
「そう来なくちゃ。サトル坊ちゃまの塾は何時に終わるんだよ」
「5時だよ」
「じゃぁ丁度いいや、終わる時間に合わせるぜ」
 タカシがそこでもう一度耳打ち。
「おばさんにはクワガタ取りに行くって言うんだぞ」
「わかったよ」
 しょうもねぇけどこれも友情。サトルは思った。
 そして約束の時刻。
 集合は学校の正門。
 タカシの他にタイヨーとカケル。全部で4人。めいめい虫カゴ持っているが全部ウソ。
「うわお前ママチャリなの?」
「クソだっせぇ」
「うっせぇよ」
 サトルは言い返した。みんなも自転車だが、変速ギア付きのスポーツタイプ。対してサトルのは、大人が買い物なんかで使う普通の自転車。ママのチャリンコ略してママチャリ。
 自分用のが欲しいとは言ったのだが、母親が電動アシストを買い、それまで使っていたのをサトル用にした、というのが実態。母親のお下がりなど格好悪いこと甚だしい。
「そのカゴ入れさせろよ」
 サトルの自転車買い物カゴに、使う気のないみんなの虫カゴを押し込む。
「くっそムカつく……」
「だってお前の奴にしかカゴとかねぇもん。よし行くべ」
 学校前から走り出す。交差点から片側一車線の県道へ。狭い路肩を一列になって隣町との境目を目指す。
 街並みが途切れると田んぼが多くなり、次第に坂がきつくなり、山の中に入って行く。その鉄道線路が接近してくる。
 タカシたちはギアを切り替え、軽快に昇って行く。
「ちょっと待てよ!」
「トンネルの前の分かれ道で待ってるよ」
.
(つづく)

|

« 【恋の小話】星の川辺で-11- | トップページ | 町に人魚がやってきた【目次】 »

小説」カテゴリの記事

小説・大人向けの童話」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【大人向けの童話】どくろトンネル-2-:

« 【恋の小話】星の川辺で-11- | トップページ | 町に人魚がやってきた【目次】 »