【大人向けの童話】どくろトンネル-2-
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サトルとしては「下らねぇ」で無視しても良かったが、弱虫呼ばわりは癪に障る。ちなみに当の“幽霊さん”は、走る兵隊の姿であったり、「腹減った、かか、飯」という声が聞こえたり、という。(かか=お母ちゃん、の意)
「判ったよ。つきあってやるよ。いつ行くんだよ」
サトルが観念したように言うと、タカシはニヤニヤ。
「そう来なくちゃ。サトル坊ちゃまの塾は何時に終わるんだよ」
「5時だよ」
「じゃぁ丁度いいや、終わる時間に合わせるぜ」
タカシがそこでもう一度耳打ち。
「おばさんにはクワガタ取りに行くって言うんだぞ」
「わかったよ」
しょうもねぇけどこれも友情。サトルは思った。
そして約束の時刻。
集合は学校の正門。
タカシの他にタイヨーとカケル。全部で4人。めいめい虫カゴ持っているが全部ウソ。
「うわお前ママチャリなの?」
「クソだっせぇ」
「うっせぇよ」
サトルは言い返した。みんなも自転車だが、変速ギア付きのスポーツタイプ。対してサトルのは、大人が買い物なんかで使う普通の自転車。ママのチャリンコ略してママチャリ。
自分用のが欲しいとは言ったのだが、母親が電動アシストを買い、それまで使っていたのをサトル用にした、というのが実態。母親のお下がりなど格好悪いこと甚だしい。
「そのカゴ入れさせろよ」
サトルの自転車買い物カゴに、使う気のないみんなの虫カゴを押し込む。
「くっそムカつく……」
「だってお前の奴にしかカゴとかねぇもん。よし行くべ」
学校前から走り出す。交差点から片側一車線の県道へ。狭い路肩を一列になって隣町との境目を目指す。
街並みが途切れると田んぼが多くなり、次第に坂がきつくなり、山の中に入って行く。その鉄道線路が接近してくる。
タカシたちはギアを切り替え、軽快に昇って行く。
「ちょっと待てよ!」
「トンネルの前の分かれ道で待ってるよ」
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(つづく)
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