« 【恋の小話】星の生まれる場所(15) | トップページ | 【恋の小話】星の生まれる場所(16) »

2013年8月 3日 (土)

【恋の小話】星の川辺で-8-

←前へ次へ→
.
 彼女は答えると、顔を塞いでいた手を、自身の胸元に揃えた。
 そして、オレの顔を見た。
 オレは意を決して、
「確認ですが、あなたは自分に彼氏になれ、と、こうおっしゃるわけですね?」
「そのように申しております。わたくしはどうやらあなたが好きなようでございます。あなたとなら一緒にいたいと、ここが、申すものでございます」
 彼女はここ、と、その抑えている胸元をパタパタ叩いた。
「素直だね言われて喜び言い続け数知れぬ人を傷つけてきた」
 それは恐らく、であるが、彼女は対人関係の築き方を把握できないまま今までを生きて来、そして、今もそうあることを示す、そんな気がした。
 ならば、放っておいちゃいけないだろう。それがオレの結論。
 さもないと、多分、ゆえなく、傷つけられる。
「オタク、だぜ?」
「男性に凝った趣味の一つや二つあって当然」
「マンガみたいな、ドラマみたいな、デートコースとか知らないぜ」
「ここで星を見せて下されば充分です。吾(あ)は見たし木星の縞土星の輪今宵あなたと二人っきりで」
 で、気が付いたら唇を塞がれていた。ウソみたいな本当の話。
 もう一度繰り返す。同級生の女の子に抱きつかれてちゅーされた。
「ガサガサ、ですね」
 でも、もう、驚かない。
「ケアとかしてねーし」
 オレが思い浮かべたのはニュース報道の遊園地とか着ぐるみショーとか。
 大好きで大好きで仕方なくて、自分からそういうのに抱きついて行く幼い子。
 そのまんま。
 女として見た場合どうだろう。地味だし髪も無造作、やせっぽちで胸感ゼロ。薄い唇、少しそばかす。
 ただそう、瞳の色は純真で無垢。
 男の本領発揮する相手か?というとそうではない。現時点。
 自分の彼女に対する気持ちは、現時点の気持ちは果たして恋なのか?
.
(つづく)

|

« 【恋の小話】星の生まれる場所(15) | トップページ | 【恋の小話】星の生まれる場所(16) »

小説」カテゴリの記事

小説・恋の小話」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【恋の小話】星の川辺で-8-:

« 【恋の小話】星の生まれる場所(15) | トップページ | 【恋の小話】星の生まれる場所(16) »