【恋の小話】星の川辺で-8-
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彼女は答えると、顔を塞いでいた手を、自身の胸元に揃えた。
そして、オレの顔を見た。
オレは意を決して、
「確認ですが、あなたは自分に彼氏になれ、と、こうおっしゃるわけですね?」
「そのように申しております。わたくしはどうやらあなたが好きなようでございます。あなたとなら一緒にいたいと、ここが、申すものでございます」
彼女はここ、と、その抑えている胸元をパタパタ叩いた。
「素直だね言われて喜び言い続け数知れぬ人を傷つけてきた」
それは恐らく、であるが、彼女は対人関係の築き方を把握できないまま今までを生きて来、そして、今もそうあることを示す、そんな気がした。
ならば、放っておいちゃいけないだろう。それがオレの結論。
さもないと、多分、ゆえなく、傷つけられる。
「オタク、だぜ?」
「男性に凝った趣味の一つや二つあって当然」
「マンガみたいな、ドラマみたいな、デートコースとか知らないぜ」
「ここで星を見せて下されば充分です。吾(あ)は見たし木星の縞土星の輪今宵あなたと二人っきりで」
で、気が付いたら唇を塞がれていた。ウソみたいな本当の話。
もう一度繰り返す。同級生の女の子に抱きつかれてちゅーされた。
「ガサガサ、ですね」
でも、もう、驚かない。
「ケアとかしてねーし」
オレが思い浮かべたのはニュース報道の遊園地とか着ぐるみショーとか。
大好きで大好きで仕方なくて、自分からそういうのに抱きついて行く幼い子。
そのまんま。
女として見た場合どうだろう。地味だし髪も無造作、やせっぽちで胸感ゼロ。薄い唇、少しそばかす。
ただそう、瞳の色は純真で無垢。
男の本領発揮する相手か?というとそうではない。現時点。
自分の彼女に対する気持ちは、現時点の気持ちは果たして恋なのか?
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(つづく)
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