【恋の小話】星の川辺で-9-
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一つだけ確信。それは“オレじゃなきゃダメだろう”という認識。
すごいおこがましい感覚なのかも知れない。でも多分正しい。
「夜出てこられる?普通女の子一人でってNGじゃない?」
「吾の君(あのきみ)と夜の逢瀬と親には言うから」
華麗に五七五。っていやちょっと待て待て。
「逢瀬って……今ひそかに五七五にしたろ」
「ラブラブならいいんじゃないかと思うけどあなたと私の二人の世界」
「短歌にしなくていいから。普通の教育を受けた親なら逢瀬の意味をもっと深く取ります」
「智さんどうして逢瀬って言葉の意味知ってるの?」
ぶっ。
「えーと」
どこから突っ込んで良い物やら。
「智って呼び捨てでいいよ。天文やってりゃ神話が出てくる。神話の中には恋物語うじゃうじゃ。ゼウスは男女問わず若くて美しけりゃ懸想する。木星の月は彼に愛された女性と少女と少年の名前」
「懸想!」
急に目がキラキラ。
萌えるな。
「私とあなたは懸想の間……上の句が思いつかない」
「話が進まないじゃんか。えーとね。お母様には自分と星を観測する。8時から9時の間位。相手は自分、と説明して下さい。ウチの親から電話させます」
「判りました智さん」
「だから呼び捨てでいいって」
「敬語には敬語でお答えすべきかと」
それは礼儀正しさの裏返しだろう。ちょいとずれちゃいるが。
一旦お開き。気が付いたら1時間以上過ぎており、帰宅したら母親が呆れた顔。
「どこで何してたの」
「女の子にちゅーされた」
「はぁ!?」
普通こういうことこんな言い方しないだろう。が、彼女の場合逆にこう言っておかないと後々母親が卒倒する羽目になること必定。
「クラスメートの安達美奈って娘に好かれた」
すると、母親の表情は一転険しくなった。
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(つづく)
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