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【恋の小話】「星の生まれる場所」(17・終)

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 遠い惑星や太陽系外へ出て行く観測衛星の加速にも使われる。
 言い換えると、スウィング・バイした星には戻ってこない。“by”だが“bye”
 ショックを受けたような意識。冷徹に分析している思考。
「どうでした?」
 キラキラ瞳の彼女に訊かれて我に返る。
「あ、ああ、すごく、良かった。振り切って飛びだして行く。不安より期待と勇気が勝ったんだね」
 それはありきたりな物言い。
「そうです!おかげさまで自信付けていただきました」
 考えてみれば10も歳の差が有ったら、それ以上の、それ以下の、人間関係。どちらも生まれづらい。
 ……自分、何考えてる?この事態を何だと認識してる?
「お兄さんの話は本当?」
「いいえ……私一人っ子なので、もしいたらそうだったんだろうなって」
 実際小さい頃ガミガミ叱ったのは父親だと彼女は言った。そして、その結果が、必要なことは教えた云々、なのだ。
「えーと彼氏さん」
 僕は傍らの男性を呼んだ。
 僕は一介の応援者。SNSフォロワー1号。
「いやん」
 彼女がマンガのように顔を両手で隠し、くるりと後ろを向く。
「いやん、じゃねーだろ。何でしょう」
 彼氏のその言は何かの決断を僕に迫る。
「あの、歌詞のネタ作りに短歌とか詩とか色々図書館で見せてたけど」
「あ、そうなんすか?自分そういうのダメっす」
 良かったら引き続き、と言おうとしたが、この一言で全てオジャン。
「……ちいっと古くさい言い回しとか出てくるかもね。見てやってね」
 僕は用意していたセリフを飲み込み、そう繋げた。
「そうっすか。ありがとーございました」
 彼氏は言うと機材配線を片付け始める。乱雑に扱って彼女が文句を言う。
 ただそれは幼なじみの気の置けない。
「じゃぁ、頑張んな」
「はい」
 二人は語りながら去って行った。
「今ならスマートフォン新規ゼロ円です」
 雑踏の中で拡声器のその声はイヤにハッキリ聞こえた。
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星の生まれる場所/終
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special thanks to 森綾加(@watame29 on twitter )
I dedicate this story to young people who dream of a singer.
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