【恋の小話】星の川辺で-13-
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「うん、入ってきたよ」
風呂に入ってきた。同級生の女の子。
物凄く、ドキッとした、と書いておく。何故かは判らない。
ティッシュを出して悠里の顔をぬぐい、それでべっちょりのオレのTシャツもぬぐう。
「ゴメン、オレ風呂入ってないどころか鼻水付き。悠里乗るか?」
「やだー。お姉ちゃんとお手々つないで行く。お兄ちゃん落とすもん」
何を言うか自分でバランス崩したくせに。
女の“客観的事実の把握の欠如”ってこの歳から既にあるのか。
さておき川へ向かう。天候は晴れでOK。悠里が覚えたてか、“たなばたさま”の歌をノンストップパワープレイ。
「でもここからじゃ砂子って見えませんよね」
この時々敬語混じり。何かあるのだろうが、心理学の本をめくればいいのだろうが、
そういうことしたら逆に“自分のナチュラルな反応”失いそうな気がする。
ちなみに砂子はその歌の歌詞に出てくる金銀砂子のこと。星屑のキラキラを指す。
「まぁ街中だしね。でも望遠鏡なら星の大集団なのは見えるから」
「『午后の授業』みたい。あ、あれって流れ星?」
午后の授業、は宮澤賢治“銀河鉄道の夜”冒頭の副題と判った。というか星ネタだから付いて行けてる。そして、流れ星?と彼女が指さしたのは……天を横切って行く光の点。
「ゆーほー?」
悠里が見上げる。二人の反応と記憶の限りでオレは答えを知ってた。
「国際宇宙ステーション」
「うそっ!?」
こっちが驚くほど大きな声を出した安達美奈。
その驚き方は悠里のそれと大差ない。
「お姉ちゃんびっくりしたよ~」
「ごめんね。え?あれって見えるの?」
「400キロ上空ではまだ太陽が見えてるわけ。逆に言うとその光が反射してオレらの目に届いてる。同じ理屈で人工衛星なんか朝夕に時々見えるよ。流れ星は大体0.3秒で消える」
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(つづく)
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