【恋の小話】星の川辺で-15-
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「だから、表は虫に食われたり水分が蒸発したりするのを防ぐため、閉じる。ただ、そういう仮説ね、現段階あくまで」
(閉じる)
説明したがもう聞いてない。悠里の四つ葉探しに付き合っている。と言っても、昼間ココにあったわけで。
「あ、あったよ」
ほぼ同じ場所なので当然そうなる。
「わ、ホントだ。お兄ちゃん見てみて四つ葉!四つ葉のクローバー!初めて見た!」
「でも取らないでおこうよ。これは幸せをプレゼントしたい誰かにあげるもの。悠里ちゃん今楽しいでしょ?だったら取ったらかわいそう」
安達美奈はそんな物言いをした。
「うんそうする!お姉ちゃん優しい」
オレは三脚の脚を広げながら、正直魂消た。
普通四つ葉見つけたら引っこ抜いて独り占めするだろう。幼子なら尚のこと。
それを納得させたこと、そして恐らく、悠里は安達美奈と一緒にいるのが楽しい。
憧れのお姉さん、ということか。
「兄ちゃん」
「んあ?」
赤道儀をセットする。ネジを締めてモータドライブに電池を接続。
「お兄ちゃんとお姉ちゃん結婚したら、お姉ちゃんは本当のお姉ちゃんになるんだよね」
ぶっ。しかしオレが何か言う前に安達美奈が口を開いた。
「そうだよ。お兄ちゃんが18歳にならないと結婚できないけどね」
何を話してるかこいつらは。
無邪気と知識の同居……オレが安達美奈に下した一次判断。
境筒載せ。動力確認。
「あ、動いた」
悠里がモータのウィウィ唸るに気付き、三脚下の布袋に手を伸ばす。
その布袋は巾着袋で似顔絵のアップリケ。
「悠里が作ったの」
フェルトを切って福笑い。ボンドで貼ってあったのを母親がミシンで縫い付け。
「これお兄ちゃん?」
「うん!」
中から取り出す接眼レンズ。別途ファインダーを取り出して付ける。このファインダーで狙った星を概略捉え、以下モータドライブを微調整し、接眼レンズ覗いた中心に星の像を追い込む。この一連の作業を天体の“導入”という。
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(つづく)
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