【恋の小話】星の川辺で-16-
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接眼20ミリで中心に合わせ、輪のある姿をどうにか確認。9ミリに変換して中心に合わせ。表面のしましま模様を確認。
もうワンランク上げたい所だが、都会の空では。
こんなもんだろ。
「土星でござい」
オレは安達美奈に見せようと思ったのだが、彼女は悠里を抱き上げ、先に接眼を覗かせた。
「土星さーん。はろはろ~。あ、お姉ちゃんもういよ。あたし前にも見たことあるから」
「そう?」
「そりゃ最初に見せるさ」
オレは言った。
すると、安達美奈は、悠里をそっと下ろし、胸に手をして目を閉じ、1回深呼吸。
「私は初めて」
大げさな。普通ならそうなるだろう。でも、彼女に関して至って普通。
何だろ、突然オンになるトランジスタみたいな。
「ピントはここで」
彼女が接眼に目を当てたところでオレはピント合わせのダイヤルを手に持たせた。
その手が震えている。真剣に緊張していると理解する。
そしてオレは圧倒された。
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天才のこぶと言いたる天体を我は輪としてこの目で見たる
数多なる光の粒と同じに見えたるも真の姿は他とは違う
目の中に手のひらの中に見えつつも実際の距離は幾十億キロ
麦わらのツバかと思いし輪のありて無数の星のくずの集まり
斜にしたシャッポをかぶったその姿次に見えるのは十数年後
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それらは普通、一つ二つの感嘆の言葉で済まされる物であろう。それが彼女の手に(見識に?)掛かると五首の短歌に化ける。
そこで一旦目を離して短冊と筆ペン登場。片っ端から書き出す。言ったこと全部覚えているらしい。
「勿体ないなって。すごいとかカワイイだけで終わらせるのって。そしたら、母が、昔の日本人はだから短歌や俳句にしたんだって教えてくれた」
筆ペンの蓋を閉め、
「もっと見ていい?」
「もちろん。他の星?」
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(つづく)
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