【大人向けの童話】どくろトンネル-4-
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「それ、自転車のカゴにどうぞ」
「そうかい?済まないね」
代わりに虫かごなんかはバス停に置いて行く。どうせ帰り道通るしいいだろ。
歩き出す。が、そのおばあさんの足取りでは、トンネル着くまでに夜になる。
「どうぞ」
荷台に座ってもらい、サトルは自転車を引いて歩き出した。上り坂人を乗せて、であるが、さほど重くないのが救い。
「重ね重ね済まないねえ」
「いいえ。夜になったら危ないです。イノシシとか出るから」
「そうかい。そういえば旦那もこうやって私を乗せて自転車引いてくれたっけねぇ」
夕陽に手をかざすその姿は一瞬、若い女の人のようにサトルには見えた。
「ああ、そっちそっち」
気を取られていたらおばあさんが言った。
「え?」
“そっち”と指さす方向は、県道から外れた草むらの中。
そこはこの先キノコの養殖場へ続いている。それこそクワガタ取りに良く行く。
だから“クワガタ取りに行く”で疑われない。
「こっちが近道でね。自転車じゃムリだろう。降りますよ」
おばあさんは軽い足取りで降り立った。
「じゃぁ案内しますよ。クモの巣とかあるし、マムシ出るし」
「あら、頼もしい」
サトルは自転車荷台のゴム紐解いて手に持ち、振り回して草むらにぶつけ、ガサガサ音を立てながら進んで行く。
「足もと大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。小さい頃こういうところで遊んでいたから、かえって面白いわ」
微笑むその顔はおばあさんと言うのがウソのよう。足取りもさっきに比べて随分軽い。
ガサッと音して動くニョロリ。
ガサガサと草を動かしながら距離を取り去って行く。
「ああ、マムシですね。大丈夫逃げました」
途中もう一度分かれ道、左は斜面を下って日陰にあるキノコ養殖場。
右は行ったことが無いが、おばあさんはその右だと言った。
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(つづく)
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