【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-01-
註:かなりショッキングです~エウリーより
1
家畜を飼育、という歴史は、現生人類ホモ=サピエンスの創成当初に遡るとされます。
その歴史の半ば、7万年前、ホモ=サピエンスは大規模な地殻変動で絶滅の危機に瀕します。しかし、そこを乗り越えてなお、ペットが人と共にあるのは、人類の皆さんを繁栄たらしめた根幹が博愛の精神にあり、それが彼らにも向けられたことを傍証します。
しかし。
21世紀、日本。
〈この森なんですがね〉
老いた野犬が耳打ちするように私に言いました。もちろん犬は人語を話しませんが、そう話したように私には認識できています。
私が人間ではないからです。テレパシー能力。
ここは夜闇に埋もれた国道の駐車スペース。あるのは灯火の壊れた公衆トイレ。そしてベンチ一つの休憩所。元は屋根があり自動販売機なんかもありましたが、洪水で流されました。
そのベンチに座っている女が一人。私です。白い装束で背中には翅。
人間型生命体ではあります。されど翅でお判りのように人間ではありません。
妖精、と呼ばれる種族です。名前はエウリディケ。ギリシャ神話のニンフの血を引き、ゆえに身体は基本、人間サイズ。但し、ケルトのフェアリの血筋も引いており、彼ら同様手のひらサイズにもなれます。
対して、私の周りには件の老犬、ネズミ数匹、野良猫とハクビシン。
仕事が動物たちの相談相手ですので、こうして一緒にいること自体は不思議ではありません。ただ、今夜はちょっと尋常ではありません。
〈ほれ〉
老犬に促され、野良猫が口にくわえたものを私に見せます。
仔猫の遺骸。
経緯を説明して言うには、最近、付近のネズミ達がぶくぶく太りだした。何食ってるのかと発見した現場にあったものがこれ。
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