【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-02-
〈いっぱい、落ちてるんだ。落ちてたから、その……〉
ネズミの一匹が言いました。確かに丸々と太っています。まるで残飯食べ放題の都会のネズミを思わせます。こうやって落ちている遺骸を食べており、その数が多いということでしょう。
ですが、ここは都会からは遠く離れた国立公園雑木林。最も、中を一本、この国道が貫いてはいるのですが。
〈私らは放置したりしません〉
ネコが自らの潔白を主張するように言いました。その言い分、ちょっと人間の皆さんにはショッキングですが説明します。
ネコは自分の子供が死ぬと食べます。
臭気で存在を他の肉食獣や猛禽に察知され、生きてる他の子供が襲われたら元も子もないからです。
「疑ってはいませんよ……あなたは無実です」
私は応じ、仔猫の遺骸をすくい上げ、老犬にも頷いて見せました。
「この子は、どこからか持ち込まれたものでしょう。この周りには何もありませんからね。あと、残酷な話ですが、人間さんには捨て猫するより殺してしまった方がいい、という理解しがたい考え方の向きもおられるようです。そういう人が夜この場所を捨て場所に選んでいるのかも知れません」
私は言いました。ただ、継続的に、というのは可能性は少ないでしょう。一人が連続であれ、入れ替わり立ち替わりであれ。
意図した何かの介在を感じます。
〈人間に敬語なんて〉
ハクビシンが吐き捨てるように。まぁ、彼らは生息範囲を人間さんに翻弄された割に“駆除対象”とされていますので、応じた反応でしょうか。
「気持ちは判るけど、まだ確証がないからね。ネズミたち、どこで良く見つかるか教えて」
〈は、はい〉
ネズミたちは随分畏まった反応です。別に死体を食べるのは彼らにとっては通常の食行動に過ぎず、私も嫌悪を持っているわけでは無いのですが。
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