【恋の小話】星の川辺で-17-
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「ううん、まだ早い。これでこの他の星見たら爆発しちゃう」
トランジスタ。それはある電圧を超えると急激に電流が流れる。なのでスイッチに使われる電子素子。彼女の感性、ものの見方も恐らくそれに近い。あるレベルを超えると急激に。
でも単なるスイッチオンで終わらせたくない。オンで終わらない。
「小さいね」
しばらく眺めて、彼女は言った。
「接眼レンズ変えればもう少し大きくなるけどね。像がぼやけるし歪む。都会の限界」
「地球より何倍も大きいのにね。視界の中に小さくぽつんと」
「それでも倍率90倍」
「遠く遠く、見た目は他より少し明るい。でも私たち太陽系の仲間。46億年前同じ星屑の中から生まれた大きな兄弟」
独り言を言っているんだと判ったので黙っていると。
「で、合ってるよね」
「その通り。それこそ土星のようなディスク状の集まりから地球は生まれた。ただ、土星の輪は後から粉々になった奴じゃないかとも言われてる。だったらやがてバラバラになって飛び散るから、我々が輪を見ているのはたまたま見えてる幸運な時期に生きてるため、という説有り」
一問一答でも独り言でも無いのだ。知らないこと吸収したいのだ。オレはそう思って一方的に話した。
で、理解した。これで別の星見たら“爆発”しちゃう。の真意……把握しきれない。好奇心、吸収意欲が制御不能になる。
「輪が無くなっちゃう?」
「億年単位の話だけどね」
「億年か」
彼女は言い、望遠鏡から目を外す。
「この空って億年掛かって届いた光で満ちてるんだよね。暗いから見えないけど」
「その通り。遠い天体ほど宇宙膨張の影響を受けて高速で遠ざかる。だから、光自体がドップラー効果によって波長を引き延ばされ、色が赤い方へ、更に赤外線へ変わって見えなくなる。一番遠いのは今のところ日本の『すばる望遠鏡』が見つけた128.8億光年」
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(つづく)
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