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【恋の小話】星の川辺で-18-

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 正直、中学生の女の子と話すのにここまで細かい話が要るとは思わんが。
 知ってること、全部、話した方がいいように思うのだ。
 知りたいと思っているだろうから。
「ドップラー……効果?」
 彼女はそっちに興味を示した。接眼レンズから目を離してオレを見る。
 の、オレたちの視線の間に割って入る悠里。
「ハイ!あたし知ってる!死ぬ前に出てくる自分のオバケ~」
「そりゃドッペルゲンガー。ドップラ……」
「救急車のサイレンなんかが急に低くなるあれだよね」
 ドップラー効果自体の説明は必要ないようだった。
「光でも起きるの?」
「波動だからね。だから、光の速さに近いような高速宇宙船で星の海を進むと、近づく星は青っぽく、今まさに抜こうとする星はくるくる色を変えて赤になって、去って行くに従い見えなくなる、だろうと言われてる。星が虹色に変化するのでスターボウ(starbow)」
 わぁ、と彼女は言った。
「スターボウ……なんて響き。レインボウ、ムーンボウ、スターボウ。太陽と月と星と全部揃ってるんだ……」
 言われて、ああそうか揃ってるなとオレの方が逆に感心した。空で輝く連中みんななにがしか虹現象を有しているわけだ。ちなみにムーンボウとは日本語では月虹(げっこう・つきにじ)と書き、月の光で生じる夜間の虹のこと。月光が淡いこともあって極めて珍しい。
「ねぇお兄ちゃん。お姉ちゃんが変」
 今更変は百も承知……と思いつつ、そういう意味じゃ無いとハッとし彼女を見ると、祈るように両の手を組み、上半身のけぞらせてガクガク震えている。
 昏倒しかかったところでオレの腕が間に合った。抱き留めると固まったように動かない。
「おい安達、安達美奈!」
 揺するが変わらず。
 何が起こった?
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(つづく)

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