【大人向けの童話】どくろトンネル-7-
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女性は近寄り、跪き、背を向いている服を返して胸元を見た。
カラカラと骨の動く音。縫い付けられた名札。「橘」。
「橘弥太郎(たちばなやたろう)。私の夫です」
気が付いたらサトルも一緒になって正座していた。
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“どくろトンネルに肝試しに行こうぜ”
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これ、戦争で亡くなった人をどれだけバカにした物言いだろう。
戦争は恐ろしい。戦争はしちゃいけない。世界の平和。
教科書に書いてある。親が言う先生も言う。
うんうんと頷く。判った判った。
逆に言ってみる。戦争が起こると言うこと。
オレ達、全然判ってない。
どころか、とんでもなく“死ぬ”ってことが判ってない。
サトルは泣いた。わんわん泣いた。ごめんなさいとか、バカだったとか、そういうのがぜんぶごちゃ混ぜになって、大泣きになってしまった。
「あらあらボク大丈夫?」
涙ダラダラ鼻水ダラダラ。みっともないの極値。
でも、でも、こうやって、戦争の中でそれこそ“放ったらかし”にされてたのに比べたら。
その時。
「あーいたいた!」
「おい!サトル!大丈夫かお前」
仲間の声に顔を向けると、タカシ、タイヨーとカケル。
それに、おまわりさん。
「お前探したんだぜ途中で……うわガイコツ!!」
「黙れ!」
サトルは思わず怒鳴りつけてしまった。
タカシもタイヨーも、カケルも、感電したみたいにびくんとなって固まった。
「岩井悟君だね」
おまわりさんが話しかけて来、一旦帽子を脱ぎ、ハンカチで額の汗を拭う。
「そうです」
「失礼ですがそちらは……」
「橘佳枝(たちばなよしえ)と申します。この骨の者の妻です。こちら折笠山第一隧道(おりかさやまだいいちずいどう)工事において行方不明になった夫を参っておりました際、こちらのお坊ちゃんに道案内をいただき、聞けば先の震災の故とか、崩壊しておりまして。えー今は骨や髪の毛から遺伝子鑑定が出来るとか。ここに生前の髪の毛を持っておりますので、これで是非に」
おばあさん……橘さんは紙を一枚取り出して開いた。
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(次回・最終回)
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