【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-03-
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なんだこの見出し。
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「別に多重人格ってわけじゃないんだ」
「微塵も思ってないよ。いや、たとえそうであっても気にしない」
オレは言うと、彼女の隣に座って、寝転び、見上げた。
街中とはいえ、応じて目が慣れたのか、見える星の数は先ほどより多い。
「自分は違うんだ、って話は幼稚園の頃から朧に記憶があるんだ」
彼女は、上を向き、髪を流し、星空に視界を向けて言った。
悠里は川に石を投げて遊んでいる。
「変な奴、みんなそう言って、離れて行くんだ。そうしなかったのは高台君が初めて」
「なるほど」
オレは一息置いた。
「オレは今、君の最大の秘密を聞いた」
「話したのはあなたが初めて」
髪の毛が流れ、見つめる瞳が自分へ向かう。
「また一つ君のこと知った」
「あなたには、言ってもいいというか、言わなくちゃいけない、そう思った」
それは恐らく彼女独特の言い回し。恐らくは、何らかシンパシー感じるところがあり、理解してもらえると確信もって打ち明けた、そんなところか。
ならば。
「男の子ってさ、ナントカヒーローとか、好きになるじゃん。ゲーム機大好きじゃん。そうじゃない奴は置いてけぼりなんだ。同じだよ」
夜空に向かって言ったら、風が動き、彼女の付けてるコロンか湯上がり故か、香りが漂い、白い顔と髪の毛が上から降りて来て、髪の毛がオレごと包んで唇を塞がれた。
「これは愛情表現」
チュッと音を立てて唇が離れた。
悠里は気付いていない。
つまり自分達どこか一緒。オレは見下ろす女を見上げて思った。
女の身体がオレの身体をクロスオーバー。その片手をクローバーの上に付き、もう片手でしなだれる髪をたくし上げ、
そうして、確保された視線で、オレを見つめる。
こいつは、女になったのだ。男の確信。
「オレでいいのか?」
「うん」
笑ったその瞬間、少女の笑顔に戻る。
年齢相応、中学校の同級生。
「じゃぁ、一緒に行こうか」
「うん!」
幾千の星の光に守られてあなたとわたし二人の始まり。
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星の川辺で/終
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あとがきもどき
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救命救急という言葉が頭をよぎる。呼吸を確認して……心臓マッサージ。
「お兄ちゃん!お姉ちゃんは?」
悠里が足をジタバタさせる。
「大丈夫だ」
オレは自分自身言い聞かせるように声に出し、草むらに彼女を横たえようとした。
呼吸の有無は鼻の所に耳元を近づけて。
「お姫様にちゅーするの?」
悠里の無邪気に、バカ!と答えようとしたが、
少なくともこの抱きかかえて感じる身体の動き、伸縮は呼吸のそれだし、なら多分心臓も動いてる。
「美奈ちゃん」
王子様のキッス、じゃないが、オレは呼んでみた。
少なくともインパクトはあるからだ。
キスは昼したし(おいおい)。
果たして、小刻みな震えは収まった。
が、目を開ける気配はない。
失神しているのともどうも違うようである。なぜなら失神なら力が抜けてぐにゃぐにゃになるからだ。何らか過敏な意識反応を起こしているのだろう。トリップしているという奴だ。
などと思いながら、女の子の顔ここまで間近でじろじろ眺めたのは初めてだと気付く。いわゆる美人でも可愛いでもないが、何だかんだで大和撫子である。ただ、少し青白いような肌の色は、苦労してるというか寝不足なのではないか。
「ひとりでずっと抱え込んでいたか」
呟いたら、彼女はゆっくり目を開けた。
そして涙ぼろぼろ流し始め、ぼろぼろ流しながらオレの腕の中にあった。
「お兄ちゃん泣かせてる!」
「ううん、違うよ」
囃し立てるような悠里の物言いに、彼女は静かに一言。
身を起こし、クローバーの上に体育座り。
更に三つ編みを解いてしまう。さらりと広がって流れ、彼女の横顔を覆い隠す。……隠すことが目的か。
するとまるで別人の体である。静謐さをたたえた、年齢相応以上大人びた若い娘の肖像をオレは見ている。
「星虹(せいこう)は亜光速だと君が言い星虹の如く人生を思う」
「オレはそばから離れんよ」
これでいいだろう。
(次回・最終回)
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正直、中学生の女の子と話すのにここまで細かい話が要るとは思わんが。
知ってること、全部、話した方がいいように思うのだ。
知りたいと思っているだろうから。
「ドップラー……効果?」
彼女はそっちに興味を示した。接眼レンズから目を離してオレを見る。
の、オレたちの視線の間に割って入る悠里。
「ハイ!あたし知ってる!死ぬ前に出てくる自分のオバケ~」
「そりゃドッペルゲンガー。ドップラ……」
「救急車のサイレンなんかが急に低くなるあれだよね」
ドップラー効果自体の説明は必要ないようだった。
「光でも起きるの?」
「波動だからね。だから、光の速さに近いような高速宇宙船で星の海を進むと、近づく星は青っぽく、今まさに抜こうとする星はくるくる色を変えて赤になって、去って行くに従い見えなくなる、だろうと言われてる。星が虹色に変化するのでスターボウ(starbow)」
わぁ、と彼女は言った。
「スターボウ……なんて響き。レインボウ、ムーンボウ、スターボウ。太陽と月と星と全部揃ってるんだ……」
言われて、ああそうか揃ってるなとオレの方が逆に感心した。空で輝く連中みんななにがしか虹現象を有しているわけだ。ちなみにムーンボウとは日本語では月虹(げっこう・つきにじ)と書き、月の光で生じる夜間の虹のこと。月光が淡いこともあって極めて珍しい。
「ねぇお兄ちゃん。お姉ちゃんが変」
今更変は百も承知……と思いつつ、そういう意味じゃ無いとハッとし彼女を見ると、祈るように両の手を組み、上半身のけぞらせてガクガク震えている。
昏倒しかかったところでオレの腕が間に合った。抱き留めると固まったように動かない。
「おい安達、安達美奈!」
揺するが変わらず。
何が起こった?
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(つづく)
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墨で書かれた便箋であって、崩し字でサトルには読めなかった。ただ、表題の「遺書」本文中の「未来」、そして「技術」だけは読めた。そこに髪の毛が数本挟んである。
すると、おまわりさんは、気を付け、をして、帽子を胸にし、深々とお辞儀した。
「承りました。旦那様におかれましては長い長い間のおつとめ大変ご苦労様でございます。こちら、一旦『行旅死亡人』(こうりょしぼうにん)として書類上の手続きをさせていただき、その事後対応という形でお帰りいただくことになろうかと思いますが、それでよろしいですか?……その、こういう言い方はまことに申し上げにくいのですが、いわゆる検死という手続きを行う必要がありまして」
「ええ、それでよろしゅうございます。法律に則り粛々と手続きいただいて構いません」
「判りました。では所轄部門へ連絡を取ります……ええっと、悟君は、じゃぁ、この友達と帰れるかな?」
「はい、もちろんです。僕のためにお手を煩わせてしまったようで申し訳ありません」
「構わんよ。それが自分の仕事だからね」
家へ連絡し、サトル達は橘さん、警察官と別れて細い道を戻り始めた。
もう日が落ちる。先頭に立って草むらをサクサク歩く。
「あのさぁ……」
後ろから、タカシが声を出す。
何があったのか教えてくれ、と言うので、サトルはトンネル工場のことを話して聞かせた。
「爆撃を受けた後、死んだ人を探すとかしないで、そのままトンネルにしちゃったのさ。で、その時埋められた部分が地震で崩れて、あの人の旦那さんがようやく見つかったんだよ」
サトルは仲間達の足音が聞こえないことに気が付き、振り返った。
3人少し離れて立ち止まっている。
「どうしたんだよ」
サトルが戻ると3人は涙ぼろぼろ流して震えている。まるで溺れた子猫みたいだ。
「見たんだよ、オレ達」
「何が」
「兵隊。トンネルでさ『ああ、やっと帰れる』って男の兵隊が歩いて行って、消えたんだ」
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どくろトンネル/終
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→大人向けの童話一覧
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「ううん、まだ早い。これでこの他の星見たら爆発しちゃう」
トランジスタ。それはある電圧を超えると急激に電流が流れる。なのでスイッチに使われる電子素子。彼女の感性、ものの見方も恐らくそれに近い。あるレベルを超えると急激に。
でも単なるスイッチオンで終わらせたくない。オンで終わらない。
「小さいね」
しばらく眺めて、彼女は言った。
「接眼レンズ変えればもう少し大きくなるけどね。像がぼやけるし歪む。都会の限界」
「地球より何倍も大きいのにね。視界の中に小さくぽつんと」
「それでも倍率90倍」
「遠く遠く、見た目は他より少し明るい。でも私たち太陽系の仲間。46億年前同じ星屑の中から生まれた大きな兄弟」
独り言を言っているんだと判ったので黙っていると。
「で、合ってるよね」
「その通り。それこそ土星のようなディスク状の集まりから地球は生まれた。ただ、土星の輪は後から粉々になった奴じゃないかとも言われてる。だったらやがてバラバラになって飛び散るから、我々が輪を見ているのはたまたま見えてる幸運な時期に生きてるため、という説有り」
一問一答でも独り言でも無いのだ。知らないこと吸収したいのだ。オレはそう思って一方的に話した。
で、理解した。これで別の星見たら“爆発”しちゃう。の真意……把握しきれない。好奇心、吸収意欲が制御不能になる。
「輪が無くなっちゃう?」
「億年単位の話だけどね」
「億年か」
彼女は言い、望遠鏡から目を外す。
「この空って億年掛かって届いた光で満ちてるんだよね。暗いから見えないけど」
「その通り。遠い天体ほど宇宙膨張の影響を受けて高速で遠ざかる。だから、光自体がドップラー効果によって波長を引き延ばされ、色が赤い方へ、更に赤外線へ変わって見えなくなる。一番遠いのは今のところ日本の『すばる望遠鏡』が見つけた128.8億光年」
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(つづく)
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女性は近寄り、跪き、背を向いている服を返して胸元を見た。
カラカラと骨の動く音。縫い付けられた名札。「橘」。
「橘弥太郎(たちばなやたろう)。私の夫です」
気が付いたらサトルも一緒になって正座していた。
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“どくろトンネルに肝試しに行こうぜ”
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これ、戦争で亡くなった人をどれだけバカにした物言いだろう。
戦争は恐ろしい。戦争はしちゃいけない。世界の平和。
教科書に書いてある。親が言う先生も言う。
うんうんと頷く。判った判った。
逆に言ってみる。戦争が起こると言うこと。
オレ達、全然判ってない。
どころか、とんでもなく“死ぬ”ってことが判ってない。
サトルは泣いた。わんわん泣いた。ごめんなさいとか、バカだったとか、そういうのがぜんぶごちゃ混ぜになって、大泣きになってしまった。
「あらあらボク大丈夫?」
涙ダラダラ鼻水ダラダラ。みっともないの極値。
でも、でも、こうやって、戦争の中でそれこそ“放ったらかし”にされてたのに比べたら。
その時。
「あーいたいた!」
「おい!サトル!大丈夫かお前」
仲間の声に顔を向けると、タカシ、タイヨーとカケル。
それに、おまわりさん。
「お前探したんだぜ途中で……うわガイコツ!!」
「黙れ!」
サトルは思わず怒鳴りつけてしまった。
タカシもタイヨーも、カケルも、感電したみたいにびくんとなって固まった。
「岩井悟君だね」
おまわりさんが話しかけて来、一旦帽子を脱ぎ、ハンカチで額の汗を拭う。
「そうです」
「失礼ですがそちらは……」
「橘佳枝(たちばなよしえ)と申します。この骨の者の妻です。こちら折笠山第一隧道(おりかさやまだいいちずいどう)工事において行方不明になった夫を参っておりました際、こちらのお坊ちゃんに道案内をいただき、聞けば先の震災の故とか、崩壊しておりまして。えー今は骨や髪の毛から遺伝子鑑定が出来るとか。ここに生前の髪の毛を持っておりますので、これで是非に」
おばあさん……橘さんは紙を一枚取り出して開いた。
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(次回・最終回)
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