【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-05-
〈ひどい。これはひどい。ひどいひどい〉
老犬が、人間的に書けば、今にも泣き出しそう。
その気持ちが……伝わったのでしょうか。後ろから野犬が2頭駆けてきました。
〈妖精さん〉
〈この“死の道”を行こうと言うんですかい?〉
「死の道?」
二匹の物言いに私は振り返りました。
〈そうです、ここは死の道です〉
〈この向こうにあるのは大きな死です〉
〈危険です。もし行くなら仲間を呼びます〉
2匹は何かしたようです。すると程なく、闇に閉ざされているはずの森のそこここに光る点が幾つも。
イヌだけではありません。タヌキにウサギ、マムシもいます。
状況を説明して参加の意思を募ります。タヌキとウサギは1頭ずつ、マムシは2匹が参加したいと。
「腕に巻き付いて」
〈了解です〉
イヌサルキジを連れ歩いたのは桃太郎ですが、比して両腕にマムシ巻き付けて。そして何よりバラエティも頭数も桁が違う。
ぞろぞろ進みます。ある意味行軍です。と、程なくしてマムシが警告。
〈変な光が見えます〉
「光?」
人間同等の私の目には何も見えません。
比して動物昆虫たちはより広い範囲の光を見ることが出来ます。カラスは紫外線が見えますし、
マムシなどヘビ類は赤外線を感じます。
テレパシーで見えてる状況をもらいます。横一線を描く赤外線。
そんなビームを作り出せるのは唯一、人間。
赤外線センサと私は判断します。つまり、この先、侵入者防止に躍起になる何かがある。
「ちょっと待ってて」
肩の小動物を下ろし、マムシたちと共にセンサビームの状況を見に行きます。
驚きました。マムシが最初に見たビームは人体の足首くらいの位置にあるもの。しかしよく見ると、その上の方にも別のビームがあります。この意図は明白で、人体や車両の接近と小動物の偶然通過を識別するため。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -20-(2023.05.31)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -19-(2023.05.17)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -18-(2023.05.03)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -17-(2023.04.19)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -16-(2023.04.05)
「小説・妖精エウリーシリーズ」カテゴリの記事
- 【妖精エウリーの小さなお話】フォビア-4・終-(2022.09.03)
- 【妖精エウリーの小さなお話】フォビア-3-(2022.08.20)
- 【妖精エウリーの小さなお話】フォビア-2-(2022.08.06)
- 【妖精エウリーの小さなお話】フォビア-1-(2022.07.23)
- 【妖精エウリーの小さなお話】翻弄-4・終-(2022.07.09)
コメント