【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-03-
「微妙だな」
次いで両頬に触れ、首筋に触れ、手のひら、手首。それは、彼女が幼子の体調を看る時の所作。
青年は全部把握している。
母親の箸が止まった。
「あら熱っぽいの?鉄板が熱いんじゃなくて?」
座卓向かい側から身を乗り出し、心配そうに訊く。
彼女は箸を置いた。
「すいません。ちょっとお手洗い……」
消化器系では無い、と思いつつ、掘りごたつ構造の座布団から、彼女は、立ち上がろうとする。
その、座っていた座布団。
「ん……」
先に気付いたのは青年であった。瞠目の割に、抑えた声。
青年は立ち上がろうとした彼女の手を握って制し、母親に目配せする。
母親が異変と気付き、座卓を回り込んで来、座布団を見、彼女の背後に目線を走らす。
母親はスッと彼女の腕を取った。青年は手を離し、母親に託した。
彼女は、これは若干の貧血であろうか、ゆるいような思惟の中で、一連の流れを認識している。
座布団に付着しているのが、血液であること。
その出自が、自分の身体であること。
および、その推定原因。
「学(まなぶ)、あんたのフリースを」
「ん」
青年……相原(あいはら)学は、背後のタタミに置いていた自分の黒い上着を、母親に手渡した。
「これ腰に巻いて」
母親は上着をジーンズ姿の彼女の腰にあてがうと、袖先を身体に巻き付けて前で結んだ。次いで席を立たせ、そのまま、付き添って店の奥へ行った。
相原学は二人の姿が見えなくなるのを確認してから、隣席座布団に目を向け、唇を噛んで少し見つめると、思い出したように若い女性店員を呼び止め、交換を依頼した。
「はい承知しました。でもこれ……大丈夫なんですか?」
「ウチのオカンが付き添ってるから。それより汚してすいませんね」
「いえ構いません。すぐお持ちします」
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