【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-04-
女性店員はにこやかに応じて座布団を丸めて抱え、立ち去る。
母親の処置は、応じた血液付着が彼女のジーンズにも認められたため、フリースを腰巻きにすることにより隠したものである。彼の認識でそれは保健体育教科書のコラム“もしもの時は”に書いてあったこと。
胸ポケットで携帯電話がバイブレーション。
メールの着信……母親。
(無題)
二人で先に帰る。残り全部食べて、金払っておいて。
相原学は折り畳みの電話を閉じる。
程なく、母親に肩を抱きかかえられ、うつむき加減の彼女が、相原学の方を見ることもなく、目の前を通り過ぎ、店から出て行く。
相原学は、彼女が置いていったウェストポーチを手元に引き寄せると、鉄板上の残ったもんじゃをヘラでかき集め、店員を呼ぶボタンを押した。
2
タクシーが走り去り、自宅玄関の門扉に手を掛けたところで、相原学はくしゃみを一つ飛ばした。
基本薄着の男だが、12月頭の東京多摩地区であり、夜間帯に上着なしは少々、薄着に過ぎたようだ。
足元にネコがどこからともなく走って来、シッポを触れさせる。
相原学を見上げてひと鳴き。
「腹減った時だけ甘えやがって」
相原学は言うと、数ステップの階段を上がり、玄関ドアを解錠し、開けた。
「ただいま」
ネコが足下をすり抜けて先に上がり込む。その足下三和土に目を向けると、靴が二足、脱いでそのまま。普段、彼女は脱いだ後外向きに揃える大和撫子の作法を知るが、それがなされていない。すなわち、そういう方面に気が回らない、あるいは出来ない状態。
少々深刻か。相原学が己れの靴を脱いで上がると、すぐ脇、浴室より湯の音。
どっちだ、思いながら廊下を歩いて行くと、奥のリビングのドアが開いた。
顔を出したのは母親。つまり浴室は彼女。
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