アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【54】
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最も、レムリアは看護師であり、権限上全て扱えるわけではない。止血して輸液して心臓マッサージ……応急処置がメインとなる。それでも、全部人力とこの手のシステムがサポートするのでは格段に違う。
「私の国立病院とリンクするシステムを構築中です。まさか空からこの船で近場の病院へ乗り付けるわけには行きませんので」
奇蹟を人の手で、とセレネは言ったが、万能かどうかはさておき、とりあえず史上最強の人命救助ボランティアであることは確かであろう。
自分を選んでくれたのは、光栄だ。
「ありがとう。ただ、一つだけ、欠点があるのです」
その説明はシュレーターから、ということで、2人は操舵室に戻った。
「ドクターシュレーター。レムリアに欠点の件を」
シュレーターの額で皺が歪んだ。
「燃料が反水素(はんすいそ)と言って極めて特殊でな。1回あたりの連続航行は12時間が限界。しかも、それだけの燃料を再度蓄積するのに25日ほど要する。まぁ、改善は要求しているがな」
セレネが繋いで。
「ですので、現状では当プロジェクトの活動は月に一度が限度です。そこであなたに異存がなければ、活動日を毎度の満月に設定しようと思うのですが如何でしょうか」
「え……」
それは言うまでもなく、自分の魔法のサイクルに合わせた設定。
「もちろん、あなたにとって大切な日で、何か……」
「いえ、そうしていただけるのであれば喜んで」
レムリアは答えた。手品以外に使い道の無かったこの力。
最良の条件下で、フルに使って、人命救助、ということであれば。
セレネは頷き、
「了解しました」
そう答え、メンバー男達の方を振り返る。
「皆さんもよろしいですね」
「もちろんだ」
アルフォンススが答える。
不思議な充足感がレムリアを捉える。パズルの最後の1ピース。チェスで陣形が整った瞬間。
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(つづく)
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