アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【121】
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すると、ちありちゃんは納得したようにビクターからレムリアに向き直った。
「連れてって。空の散歩」
以下、レムリアが操舵室へ飛ばした指示を、逐一書き出すのは野暮というもの。
「舵はお任せします」
スロープを登り、通路を歩き、扉を開け階段を上がり、
甲板へ。
ふたり、夜空の散歩。
船が浮き上がり、緩やかに加速しながら上昇し、厚い雪雲を突き抜けてその上、
雲の海原は、月明かりの中。
少女二人を甲板に乗せて、船は天空を行く。
大きくカーブを描き、月の姿を左舷に見、針路は欧州。
但しこれにはレムリアの意図がある。
ちありちゃんが言う。
「この感じ憶えてる気がする。どこかで見たような……こういう気持ち何て言うんだっけ」
「デジャヴのこと?」
緩やかな気流に短い髪を任せて、レムリアは言った。
「そうそれ」
「違うよ。あなたの実際の記憶」
レムリアはまず言った。それは悲しいことですごいこと。先にも書いたが不明瞭なのはモルヒネの影響。
それでも憶えているのは、それほどの強い印象。
「少し飛ばすよ」
シュレーターの舵で船は加速し、応じて出力を増した光圧シールドの金色の光が船体を淡く包み、二人の周囲を数多の光子が舞い踊る。
そして。
舷側のロープにもたれ、レムリアは星の世界を見上げた。
地球の自転速度を遥かに上回る速度で航行するということ。
応じた速度で星空が巡ること。
シールドの光周波数を変更すれば、金色の光は無色に出来る。雲より上にあって人工光の影響は皆無となる。
従って。
「うわ……」
ちありちゃんが有様に気付いて絶句する。プラネタリウムの場面転換よろしく、冬の銀河を擁した星空が目に見えて天を巡る。白く煙る星の川がコーヒーのミルクのように大天蓋をたゆたい動く。
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(つづく)
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