アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【44】
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「お花はデスクの上の花瓶へどうぞ。荷物を置いたら、メンバーに紹介したいので、操舵室までご案内します。奥手左側がクローゼットになっています。一番奥の扉がユニットバスです」
「あ、はい」
ピギーバックの荷を置き、コートを脱いでクローゼットにしまい込み、バスルームで花瓶に水を入れ、オリエンタリスを移す。
再び先導を受け、今度は船尾方向へ。
「ごめんなさいね狭くて。あなたが女の子と伺って慌ててスペースを割いたものですから。好きに使って下さいね」
「あ、はい……」
さっきから同じことばかり口にしている気がする。
しかし、何と返事すれば良い物やら。
SF宇宙船の通路を行く。出入りスロープの位置を越え、更に船尾へ歩く。
左手に大きな扉。2枚パネルの組み合わせ。左右に開くか観音開きか。その有様はやはり映画に出てくる、今度は大銀行の秘密金庫。
或いは、極低温の保冷倉庫の扉と言った方が良いか。
クジラすら冷やせそうな。
「わたくしです。レムリアさんをお連れしました」
セレネが扉に向かって声を出す。人語を解すロボットドア?
そうではなかった。ドアパネル自体がインターホンの役割を持っているのだ。
了解の旨英語が返る。相手は男性で、声音からして自分の父親くらいの歳か、若干イタリア訛り。
程なく、大きな金属同士が接触するガチャーンという音がし、伴い、遠くの雷のような、ドーンという余韻を引いた。
唸る音がし、ドアが開きだし、接触音の正体は原動機出力軸が開閉システムに接続される音だと知れた。揚水ポンプとか、発電機とか、EFMM活動現場でも似たような音は聞く。それに比して要したパワーは桁外れに大きい。
巨大なエネルギーをこの船は蔵する。レムリアは直感した。
動き出したドアパネルの合わせ目にスリットが入る。
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(つづく)
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