アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【98】
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別に単なる無茶無謀な発言ではない。EFMMにはすぐ自分と判るからだ。警戒を解いてもらう労はない。
それに何より、自分は普段、戦乱に近づくなと言われ、庇護を受ける立場だった。
この万全の仲間達を得て、恩返しをする時は今。
及び。
「船長」
レムリアは問いを発した。
『何かね?』
「戦乱の場に年端も行かぬ娘が現れるというのは、何らかの心理的影響を与えるものでしょうか?」
『何だって?』
意図するところ、殺戮の亡者と化した男達が荒れ狂う戦乱の地において、女、しかも少女という存在が現れるインパクト。
何もないとは思わない。経験が確信を与える。
例えば難民キャンプを襲う自称〝聖戦士〟。テントの幕をめくると異邦人の少女、このシチュエーションに過去驚かなかった者はない。
そして、戦場においては、刹那の躊躇が、全てを制する。
『ジャンヌ・ダルクだな。それとも我々を導くつもりか?自由の女神よ』
アルフォンススが、ドラクロワの壮大な絵画を想起したことを、レムリアは知った。
ジャンヌ・ダルク。彼女は魔女裁判で火あぶりになる。言わば、先輩魔女。
ただ、自分に死ぬ気はない。比して女神はまさか。
「魔女として、お引き受けします」
果たしてアルフォンススは笑って寄越した。
『誰も考えつかない作戦として見上げた勇気を買おう。副長、何か感じるところはあるか』
「いえ、彼女もわたくしもある種の確信を得ています。船長の赴くままで問題は無かろうと」
『良かろう。だがスーツのサイズが違う。シュレーター。船の装備で講じる防御策はあるか』
「敵施設の破壊を厭わぬのであれば」
シュレーターは即答し、レムリアに向かって親指を立て、後ろを指し示す。
意図するところ、用意せよ。昇降口へ向かえ。
『構わん、許可する』
アルフォンススの言を聞きながら、レムリアは巨大な扉を開く。
『では船長、その地下10キロにこの船を突き立てる。光圧シールドチューブを地下に向かって走らせる』
『了解した』
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(つづく)
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