アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【87】
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EFMMの団長である。
「すいません。私の……」
レムリアが断って出ようとしたら、電話は切れた。
衛星携帯電話は、名の通り、電話端末と通信用の人工衛星とが、直接通信する。
従って、衛星との間に建物などが入って電波が遮られれば、通話は切れることもある。
呼び出す途中で切れる。それ自体は珍しいことではない。
だが、これは何か違う。
何か引っかかる。
「君の電話の通信システムは本船コンピュータに記憶させた。そのまま発呼して使えるはずだ」
船長が言ってくれた。
それだ、とレムリアは思った。この船は高い空を飛んでいる。電波が途切れることは通常無い。
確かに、使う衛星を切り替える際に、一時的に途切れたりすることはあると聞いた。だが、技術の進歩(シームレスハンドオーバ)で会話が切れる心配は無いとも聞いている。
それともう一つ。
「レムリアさん?」
端末を黙って見つめるレムリアに、セレネが訊いた。
かけ直してはならない。違和感がある。
「今の着信に逆探知はかけられますか?」
レムリアは訊いた。
「それは何故ですか?」
セレネが訊き返す。レムリアの抱いた〝違和感〟に超感覚の発動を感じている。
レムリアは答える。
「緊急呼び出しはショートメッセンジャーの一斉送信が普通なんです。一人一人に団長自ら電話を掛けるなんて悠長なことはしない」
「裏に何かあると」
「ええ」
「船長」
「了解した。試みよう」
セレネの口添えにアルフォンススは答え、自らコンソールを操作した。伴ってメインスクリーンに小画面が一つ開く。
その画面の構成は、レムリアにはネットの〝チャット〟を思わせた。パソコンの歴史を知る向きにはコマンドプロンプトと言った方が実際には近い。
「これでコンピュータと会話を行い、探知した電波の座標を出させる。EFMMの使っている通信システムは?」
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(つづく)
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