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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【80】

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 大男が膝を屈し、携帯電話画面の写真と少女を比べる。
 やつれているが、ほくろの位置や眉毛の感じは写真と一致する。
「でもこの子は奄美大島で……」
「人身売買組織の手になるところでした。彼女は……麻薬をかがされて、何も覚えてはいないでしょう」
「う……何か良く判らんが承った」
 青年は一発結論を寄越した。
 自分たちの判断は正しかったという認識。
 運命のままに動き、後からその正当性を明らかにされるこの感じ。
 それこそは、奇蹟そのもの、なのではないか。
 大男が少女を下ろし、青年の肩に担がせる。
「預かった」
「では、いきなりご面倒ですが」
「確かに面倒だよ可愛い子。天使か妖精か知らないけどさ。一期一会だ。名前訊いてもいいかい?」
 青年はレムリアの目を真っ直ぐに見て問うた。
「レムリア」
 彼女は答えた。青年の認識を知る。神隠しと呼ばれる現象が自分の前に発生した。
 非常識を受け入れる心理的土壌がこの青年にはあったのだ。
 これは偶然なのか。幾度も自問している気がするが、これこそは本当に奇蹟なのではないか。
「幻の大陸だな。夢かも知れないけどな。ともあれ預かった。突っ込まれてもアリバイはあるんだどうにかするさ。行きな天使さん。形而上の存在が地上に長居するもんじゃない」
 青年は薄い笑いを浮かべて言った。携帯電話を開く。警察へ掛けると知る。
『レムリア後は任せましょう』
「魔女っこ行くぞ」
「はい」
 セレネとアリスタルコスに促され、レムリアはスロープから船内へ戻る。
「また風が吹きますのでご注意を」
「ああ判った」
 青年は少女を抱いて船に背を向けた。
 これは出会いだ。それがレムリアの認識。
 そして欧州に対し、ユーラシア極東の理解者。
 地球の、表と裏。
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(つづく)

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