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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【63】

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 セレネの声に、地球眺める旅行者と化していたレムリアの意識は現実に引き戻された。
 この間に船は地球を2周。担当しているレーダ画面に赤い×印が点滅している。
 そこは副長セレネが〝心の悲鳴〟を拾った位置だと知る。
 船のコンピュータから、自動制御でそこへ向かう旨の合成音声。英語であるが日本語で記す。『位置の同定を行った。INS作動し、加速する』。
 再び一瞬の無音の時間が訪れ、映画のシーンチェンジよろしく画面が光り、何か映し出す。
 海面である。船は今中空に止まっている。レムリアは自席画面に表示された地図より、ここの位置を知る。
 マラッカ海峡。
『船体停止。自動制御解除。操舵権移譲』
「手動操舵」
 船が言い、シュレーターが応じ、舵持つ手に力を込めた。
「各員対象者捜索を開始」
 船長アルフォンススが言った。
 双子が操舵室を出て行く。
『甲板から目視だよ魔女子(まじょこ)さん。撃たれても死なねぇしな』
 イヤホンに声が飛んでくる。先ほどシュレーターが操作覚えるのに一ヶ月と言っていたが、この辺の慣れた動きは、その一ヶ月で救助の訓練もしていた、ということであろう。
「気をつけて」
 レムリアはそう返した。……口先ではない。EFMMも武装護衛付きで活動することがままある。医薬品、医療機器、麻薬成分を含む鎮痛剤(モルヒネ、ソセゴン)、狙われるものは多い。幾度か、遠距離弾が飛んできたことがある。
『優しいなぁ』
 厳つい外見、軽妙な語り口。それは知る限り、修羅場を知り実力のある男の余裕。
 画面を捉えていた視覚に違和感。
 海面を映す画面は一面の水のように見えたが、良く見ると帯状に色の異なる部分がある。
 レムリアは船底カメラが捉えたその画面を正面に回した。
「この部分は?……」
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(つづく)

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