アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【70】
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次は中の子ども達を救い出すステップである。レムリアは席を立とうとした、その時。
船のコンピュータが警報を寄越す。麻薬成分のガスを検出。
麻薬。種類は。
「アヘン……」
レムリアは呟いた。そして全て合点が行った。心の悲鳴が一瞬だけで終わり、その後子ども達の心が読み取れない。
その理由。アヘンである。タバコのように吸引する麻薬であるが、この煙を船倉内に満たし、怖いも何も判らないようにしているのである。
依存症にして拘束するという意図もあろう。
思わず握った手のひらがトラックボールに爪を立てる。
「アムステルダムへ。依存症の療養所があります」
レムリアは反射的に言った。オランダで少量の麻薬は捕まらない(合法という意味ではない)。当然依存症も多い。なおこの時、アルゴプロジェクトが隠密であるという認識はレムリアの脳裏になかった。
吹き飛んでいた。子ども達を救いたい。ただそれだけ。この船使えるなら使いたい。
副長セレネが船長アルフォンススにプライベートコール。関係者外秘。
この間3秒。
『シュレーター向かえ。到着後は彼女の指示に』
アルフォンススは言った。彼女とは自分のことだ。カメラに動きがあり、マストの中途まで昇ってきたアルフォンススの姿を捉える。その背負った銃は、銃と言うよりどこかの対空砲を外して背負っているという印象が強い。必殺銃を抱えたアニメの合体ロボットを見ているようだ。
『船底を破る。赤外線レーダ同調』
画面の中でメニューや選択の表示が勝手に動く。アルフォンススがその〝電磁波干渉〟能力を用いて船と通信し、船の探知装置と銃の照準を連動させている。
サイボーグという言葉と概念を知っている。彼は生身のまま同じ事が出来るのだとレムリアは合点がいった。
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(つづく)
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