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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【89】

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 自然界に存在する物質だが、〝利用〟するには大がかりな加工が必要であり、企てが始まった20世紀初頭は、大国の国家予算を必要とした。しかし20世紀後半から21世紀にかけては、一般市場で流通している機器・材料で〝利用可能なウラン〟が得られるようになった。実際、国際機関の査察で、軍事国家からそれら機材や測定器が見つかっている。そのため、〝ウランの加工〟に転用可能な機器は、その辺の電器屋で売っていても輸出は厳しく規制される。
 海外からネット通販やオークションで何でも〝輸入〟できる時代だが、逆は法に触れる可能性があるのだ。一般常識として知っておいて良い。
 戻って、その村は軍事国家の勢力下にあり、政府が軍隊を配置して管理している。しかし、周辺の地元民族が奪取制圧を虎視眈々と狙っており、小競り合いが頻発していた。一般に割拠した少数民族が政府正規軍に楯突いて軍事的に勝利を得られる公算はなく、無駄な戦闘は挑まない(〝神〟の名によって信じ込んでいる手合いは除く)ものであるが、この地は、狙うものの故に、周辺の他の貧困国や国際テロリズムの支援を受け、潤沢な武器と組織を有していた。
「正直、背景が何であろうと私たちには関係ないのです。重要なのはウランの産出に高い賃金で人を募り、放射性物質に関する知識のない人々を危険な作業に従事させていること」
 判っているのに看過は出来ぬ。ちなみに政府はEFMMの定期巡回をあっさり許可した。これは国際医療団を受け入れることにより、正当性を主張し、危険作業を押しつける〝核奴隷〟を否定する隠れ蓑にするためと容易に予想できた。
「そんな場所で団長殿以下連絡が途切れたわけだ。政府の受け入れ方針が変わったか、蜂起した民族が占領して訪れた君たちの団体を人質としたか。単なる医療器具泥棒か。レムリア……どれにせよ君の判断は的確と言えそうだ。かけ直すと君という存在を連中に知らしめる。或いは虚偽を言ってさらにおびき寄せるなどした可能性がある」
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(つづく)

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