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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【49】

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 既に出来上がっている。ただそれは、大人が良くやる外堀埋めての籠絡とは捉えたくない。なぜなら少なくとも、彼らは今、自分を12歳の小娘ではなく、触れることさえ出来ぬ姫君でもなく、単なるメンバー候補の一員として遇してくれている。彼らにとって自分は、看護師で魔女。船長は傭兵で人間レーダー。双子は銃器使いと不死身のコンビで賞金稼ぎ。
 それらと同じ。と、思い至って気付く。個々をコールサインで呼ぶのは、恐らく。
 それさえ判っていればいいじゃないか。
 EFMMでも姫は姫である。スタッフが自分を気にする、かばうような言動もままある。
 対して、それならば。
「私に出来る全てを」
 レムリアは言った。
 すると。
「ありがとう」
 船長アルフォンススがまず答えた。そしてその大きな手のひらで拍手をした。
 男達が追従する。笑顔が囲み、拍手が室内に反響して広がる。
「軍人は嫌いかとドキドキしたよ」
 アルフォンススはくだけた調子で言った。
「それを言ったら銃の使い手は人殺しと思われてるかと」
 アリスタルコス。
「若いだけマシだろお前たちは」
 シュレーターが言い、男達が笑い合う。
 不思議な気持ち。それは、映画に見るこの手のチームで描かれる上下関係と、大きく異なる違和感か。
 いや、それは正しくない。この人たちに人間味、仲間感覚、温かさを感じるからだとレムリアは知った。接していて、居心地がよいのである。
 最も、薄情な人が救助ボランティアなんかしないわけだが。
「さぁ、細かい話はランチと共に……お腹すいていませんか?」
 国際旅行をすると、時間の感覚がどうしてもずれてくる。
 昼の1時を過ぎている。
. 
(つづく)

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