アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【118】
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「具合は如何?ひどいことされたんだから、急いで元に戻ろうとしなくてもいいよ」
寝しなの子どもに囁くように、レムリアは言った。
恐怖と絶望の中を彷徨ったのだ。簡単に復古するほど心の傷は軽くはあるまい。
『ああ、やっぱり、天使さんだ』
ちありちゃんはまず涙声でそう言い。
『私のことをあなたは知ってる。ああ、やっぱり天使さん本当にいたんだよね。そうだよね。テレビが……』
少し明るい声。しかし、続いた言葉は沈んだ声。
揺れ動く感情の大きさは、心が落ち着きどころに戻っていない証。
「ゆっくりでいいよ。あなたの話を聞きたい」
一息おいてのちありちゃんの説明によれば、テレビの報道は彼女の意に反しており、まるで相原学が誘拐したような物言いになっているという。それで相原が逮捕されたのではないかと心配になって電話した、との由。電話番号は、相原学自身が、何かあった時にはと、ちありちゃんの両親に教えていたもの。
公明正大だからこそできること。いやむしろ当事者の当然の配慮。
『私、ちゃんと他の子ども達と一緒だったとか、日本に連れてきてもらってあの男の人に預けられたとか、ちゃんと話したのに……』
放送では全てカット。
『お願い天使さん。あの時の天使さんなら私の願いをかなえて。あの人に掛かった疑いを……』
「もちろん。心配しないで。2~3日のうちに騒動は収まるでしょう。約束します」
レムリアは堂々とした口調で、今だけは天使の気分で即答した。
自信を持って言える理由は、自分は国家権力と直結だから。
『よかった……』
携帯電話を頬に当てたまま、床にぺたんと座り込むイメージが浮かぶ。
「天使の権限で。ところで、私はあなた自身が心配なのだけれど、大丈夫なの?」
レムリアの問いに、ちありちゃんは、夜が怖くて眠れないと答えた。
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(つづく)
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