アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【26】
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コースを承知し、ジェフ氏のおごりはサラダをチョイスした。どうしても肉が中心なので野菜が欲しい。ワインはあり得ないのでグレープの生ジュース。
以下、指紋が付かぬようテーブルナプキンを介して皿が運ばれる。
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・カキの前菜。
・ポタージュスープ。
・カルトのサラダ盛り合わせ。
・魚のグリーンソース。
・若鶏のワインソース。
・牛のステーキプロヴァンス風。これに焼きたてのパンを幾つか。
・デザートは苦チョコレートケーキとコーヒー。
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「これが100年前のメニューですか」
食後のコーヒーにミルクの渦を描きながら、彼女は尋ねた。まぁ確かに、フレンチに付きもののフォアグラは無かったし、ホテルレストランというよりは家庭料理の趣。しかし新鮮な素材をふんだんに使ったという点では贅沢といって差し支えないだろう。しかもフレンチというと少々味がくどいという印象があったが、これは素材の良さはそのまま、まさに〝味付け〟程度であって、至極上品だ。変な話かも知れないが、同様にシンプルなデザインの皿類までも上品に見える。白地のプレートに、車体と同じブルーのラインをあしらっただけ。但しブルーのラインはよく見るとキラキラ光り、ラピスラズリの含有を感じさせる。でも、本当によく見ないと判らないほど。
本当の贅沢とは、根本的に良い物を選ぶことと、そのために手間暇を惜しまないことであって、過剰な演出で見せかけを飾ることではない。
コーヒーカップが空になった。美味しかった。
「姫君」
レストランチーフがサロン車のチーフを伴い、テーブルの傍らに。
「tres bien」
彼女はまずレストランチーフに一言。訊かれて初めて答える……では失礼な味だろう。
そして形容詞をつけたり、個々に細かく説明しなくても、これだけで良いはず。
王女が言うのだから。
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(つづく)
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