アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【95】
←前へ・次へ→
.
画面を横切る緑の光条。
ミサイルが胴体部分で真っ二つとなり、爆発する。
その爆発の煙の向こうで、事態に気づき、明らかに驚いて反転逃走する兵士たち。
『おいおい』
ラングレヌスの呟き。
『こいつら、地下に何か作り込んでるぞ』
言葉尻に含む不敵。
画面奥に逃走する兵士達を、カメラのズームで追いかける。
彼らは走り、地面に飛び込むような仕草をし、そのまま姿を消した。
例のSARに切り替えるが、塹壕の類は映らない。銃口だけこちらを覗いているような感じでもない。船のセンサも武器を検出しない。
完全に姿を消し、攻撃してくる気配なし。地下に絶対安全の構造物があり、その中に入り込んだと考えるのが妥当なようだ。
「なるほど」
アルフォンススが呟いた。
「更に来ます」
セレネが言った。
レムリアにもそれは感じる。ただ、それは個々の具体的な攻撃手段を示していない。
もっと大規模。ズラリと並んだ殺意。
「大きいです……」
感じたままレムリアは呟いた。
池に落ちた雨粒の波紋が重なって一つの大きな波になるように、殺気が重なり、合わさり、全体として衝撃波を形成し、攻め寄せてこようとするのを感じる。
重低音。
地面が割れる。
地割れではない。それは地面を装った、蓋。
画面に幾種類もの警告が出て赤くフラッシュする。照準システムの探査ビーム、赤外線探知装置。
「放射線を探知。照準装置の検出位置と一致します」
船のコンピュータが表示するままをレムリアは読み上げる。照準装置は銃器に搭載されたものだろう。銃器と、放射性物質が、同じ位置にある。
すなわち。
「劣化ウラン弾というヤツだよ。副長指揮を頼む」
アルフォンススは言うと、自席を立ち、背後扉より姿を消した。
程なく各人のイヤホンから電子音が聞こえ、それぞれのコンソールに権限移譲した旨表示が現れる。
.
(つづく)
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】城下 -10-(2023.12.09)
- 【理絵子の夜話】城下 -09-(2023.11.25)
- 【理絵子の夜話】城下 -08-(2023.11.11)
- 【理絵子の夜話】城下 -07-(2023.10.28)
- 【理絵子の夜話】城下 -06-(2023.10.14)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -24・終-(2023.07.26)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -23-(2023.07.12)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -22-(2023.06.28)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -21-(2023.06.14)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -20-(2023.05.31)
コメント