アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【103】
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〈レムリア……〉
衝撃と落胆の意志がセレネから飛んでくる。コンクリートの卵の殻に水をたたえた原子炉の下、ウランを掘り出す際に生成された、地下20キロ遙か、大陸地殻断層面にまで続く深い穴。
そこに今、炉心の減速材として使用されていた水が、滝の勢いで放出されつつあり、その水によって空気が動き、風が生じている。
そして、その水が下方に溜まり、死んだことすら知らないままの人々が、浮かんできた。
核事故の隠蔽のため、〝証拠〟である彼らは、プルトニウムを抽出する際に生じた核廃棄物もろとも、この穴に遺棄されたのである。
それは、余りに過酷で残虐な状況であり、表現を控えめにしたい。
原子炉でウランの核反応が起きると、副産物としてプルトニウムが生産される。このプルトニウムは反応後の物質(核のゴミ)に混ざっているため、より分けて取り出す。この作業を分離或いは抽出と呼ぶ。一般的なのは核ゴミを極めて強い酸である硝酸に溶かし、試薬として市販もされている「リン酸トリブチル」等で化学反応を行わせて取り出すものだ。いわゆる原子爆弾の原料には、ウラン235或いはプルトニウム239を用いるが、ウラン235を取り出すには巨大なプラントと高度な技術を要する。対しプルトニウムは原発の排出物から薬品で取り出せる。従って原子炉とウランさえ手に入れば、プルトニウムを取り出す方が技術的障壁は低い。この国はその炉を、天然原子炉を範として水だけで生成し、そして、プラントの運転……核物質の取り扱いを、前述の如く、人手で行ったのである。
すなわち〝人間の使い捨て〟。
当然、秘密保持のため皆殺しも視野に入れたものと断じて良かろう。従い、放射線事故で死亡した人体は内部で〝処分〟。他方、医療団を受け入れ表面上は健康維持に前向きに見せかけ、という構図が見て取れる。
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(つづく)
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