アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【108】
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「……あ、はい。失神はしていますが、放射線による意識障害とは考えにくいと思います。下痢や出血、皮膚の異常も認められませんが、これ以上は経過観察の領域に入ります。ただ、私の手の内では」
知っているのはむしろこの目の前の面々である。
すると。
「我々の病院探しか、プリンセス」
団長が細く目を開けた。
「あ、はい」
「本部を経由して……」
核事故の契約病院は日本にある、と団長は言った。
日本。
EFMMの主旨から、救助活動で訪れたことがないのは前述の通りである。
「不思議そうだな。行ったことは確かにないからな。だが経験は最も豊富だ……」
団長はそこで再び意識を失った。
「日本だそうです」
『原爆か』
アルフォンススの言葉にレムリアは思い出す。ヒロシマ・ナガサキ。世界で最も平和な国と言って良いだろう日本。唯一、核兵器の攻撃を受けた国。
「向かって下さい。私の方でアポイントを取らせます」
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【※についての解説】
一般の発電・商用原子炉の水が抜けることにより発生する「高温」は、核分裂で生じる熱を吸収する物質がなくなるためであって、核分裂反応が暴走的に生ずる原子爆弾とは本来的には異なる。実際には炉の水が抜けると、核分裂反応の引き金となる「中性子」は、高速で飛び去ってしまい、むしろ核反応は減衰する。従って、原子力発電所の事故は「原爆化」するわけではない。
また、実在した天然炉(億年単位の太古)では、鉱脈への地下水の流入→中性子の適度な減速による連続核反応→核反応熱による水の蒸発→核反応の停止→再度の地下水の流入というプロセスを数回繰り返したと考えられている。
にも関わらずシュレーターより「水が抜けて原爆」という表現が出てきたのは、直感的な理解のしやすさのみならず、排水によって核廃棄物が炉の底部排水孔に高密度に集積し、不完全な原爆を生成する可能性を含んだためと考えられる。
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(つづく)
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