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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【114】

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「君の方が風邪を引くぜ」
 雪積もる草原を歩く足音がザッザと乱れ聞こえ、レムリアの両脇を大男二人が相原へ向かう。
「へへ。同じ人間が二人見えるぜ」
 大男達は何も言わず、相原学を抱え上げた。
「船に運ぶぞ」
 〝当船に保護〟
「あ、はい」
「何する~おお、雪って不味いなぁ」
 船のベッドに横たえた時には、相原学の意識はなかった。
 異常な言動の一因は低体温による意識障害と思われた。すぐにベッドの内蔵ヒータを起動し、加温パッドを両脇と腿裏にセットする。
『彼に何が?』
 セレネが訊いてきた。異常な言動の主たる要因。
 それは、強く彼の意識に刻まれ、エンドレステープのように、壊れたオーディオディスクのように、際限ないかの如くフラッシュバックを繰り返していた。記憶の強烈さの故に、テレパシー能力を駆使するまでもなく、勝手に意識に飛び込んできた。
 件の出来事で誤解を招き、失恋したのであった。
 -ロリコン、うそつき。
 彼の心は粉々に破壊されていた。雪の冷たさ、痛さ、痺れて感覚を失って行く己れの身体が心地良いというのだ。自傷行為と言って良かった。
 自殺しようとは思わない。その代わり死んでも構わない。
 自分を喪失した状態。
 生きているという自覚がないから、死のうという思慮も沸かない。
「失恋って、ここまで、ひどく傷付くものなのでしょうか」
 ベッドサイドに居並ぶ偉丈夫のどちらともなく、レムリアは訊いた。
 端的に彼らは強靱な体躯に眉目秀麗。言動も面白い。仮に交際相手として嫌いになる要素は見られず、質問相手として適切かは確信が持てないが。
「本気なら、あり得るだろう。突如力任せに引きはがされるわけだ。強いほど深く、広く根を張っている。それを一度に、根こそぎどころか周りの土ごと失う。そんなんで判るか」
. 
(つづく)

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