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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【113】

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 パラボラを向けた先へ舵が取られる。船が西進し、PSC作動の文字が出る。自動操舵モード。
 雪は本降りとなって来た。都心に比して気温の低い多摩地区に進行したこともあり、正面スクリーンは一面の白。
「SAR」
「はい」
 指示を得てレムリアは画面をレーダ探査によるコンピュータグラフィックスに変える。
「座標一致。両舷停止」
 シュレーターの言葉の意味。先日と同じ場所に到着、船を空中で停止。
 テレパシーが捉えたのは、痛み。
 次いで船のレーダが人体反応。赤外線で得た発熱体の形状を人体と解析。
 感じた痛みは心の痛み。……彼であった。
 テレパシーの反応が船に送られ、赤外線の反応位置と一致することが確かめられた。
 彼は、雪の中で思考停止状態。放心。
 強い精神的ショックが彼を捉えていることは間違いなかった。
 レムリアは走り出した。
「おいおい待ってくれ。……ちっ。吹雪になるな」
 シュレーターが慌てて降下処置を行おうとし、空気圧を作動させようとして、操作を中止した。降下の暴風は吹雪を作り出す。
「レムリア30秒待て。セイル展帆」
 船は帆を広げ、更にその帆を水平に寝かせた。
 帆は翼となり、動力を切った船は上空から滑空降下した。
 レムリアはスロープが出るより早く雪原へ飛び降りる。
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「おや天使さん」
 レムリアの姿を見るなり、青年相原学は言った。
 寝間着にはんてんで雪の中に突っ立っている。傘を差しているわけではなく、その全身は濡れそぼり、頭髪には雪が付き、額の前で氷柱をなし。
 唇は青紫。動いていなければまるでオブジェである。
「遂にオレも天国へ行けたかな?」
「違う……あの……」
 甚大なショックをレムリアは感じていた。この青年の言動は常軌を逸している。
 そこへ追い込んだのは、恐らく自分。
 自分が、誰かに、迷惑を掛けた。
. 
(つづく)

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