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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【88】

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「インマルサット」
 レムリアは答える。それは20世紀から存在する衛星通信システム。及び衛星自身の名前。
 開いた小画面で英語のやりとりが走る。その間にレムリアはEFMMの本部に電話を掛ける。
 電話端末の問題なら、この発呼は失敗するはず。また、本当に自分に用事があって切れてしまった、ならば、本部にメッセージの一つもあるはず。
 それに、本部はメンバーが今どこにいるか把握している。船の探知がそこと一致するなら。
 この船なら、そこまで飛べる。
 数秒で。
「レムリアです。団長と……」
 応対した事務の女性の声は切迫していた。
『ああ姫様。実は定時通信が途絶えました』
 操舵室内にスピーカーからの声が響く。
 メンバーの注目が集まる。
「今回の予定の場所は?」
『アフリカの……』
 国際安全保障上の理由から名を伏す。
 その場所を聞いた船長の動作が、にわかに慌ただしい。
「過去1時間にアフリカから発呼されたインマルサット向けの通信は7件。そのうち1件が合致する」
 画面に地図が用意され、伏した地名その場所に、発呼位置の「+」マークが重なった。
「ありがとう。……嫌な予感がします。行ってみます」
 レムリアは確信を得て言った。
『行くって姫様今どち……』
 答えず切る。説明できないし信じてくれない。
「船長」
「シュレーター行け」
「了解。当該座標に急行」
 程なく、INSが作動し、超絶の加速を行い、サハラ砂漠をかすめる辺りに。
「ここは、EFMMでは定期巡回点に定めています。理由は……」
 レムリアは地図上の「+」をトラックボールで動かしながら説明した。
 ウラン鉱山を擁する村。
 ウラン。ウラニウム。言わずと知れた核燃料であり、原子力発電は勿論、核兵器の燃料として最右翼にある物質である。武器は勿論、外貨の獲得源にも使え、その物流を支配することは、国内権力のみならず国際影響力を高める。貧困国家や支配欲の権化、或いは、テロリズムなどの歪曲した主張を掲げる非国家主体にとって、垂涎の的。
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(つづく)

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