アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【43】
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「あ、では、レムリアで」
「幻の大陸ですね。ではようこそレムリア、私たちの船へ。中にあなたの部屋があります」
船の左舷、胴体部に縦方向のスリットが入った。
そこが動いて口を開くと知った。真の船であれば喫水線の下であり、すなわち、普通の水面を行く船ではない。
出入り口であるようだ。四角く切り取られ、一段奥へ引っ込み、右方へスライドして開いて行く。
同時に、開いたその口の下から、プレートが舌出すように出現し、斜めに伸びて床に接し、スロープを形成する。ご丁寧にポールが立ち上がってロープの手すりも付いた。それこそ、港から船に乗るかの如く。
常識を超越した事態が、今目の前で進行していることをレムリアは意識した。
〝セレネ〟の先導を受けてスロープを上がって行き、出入り口をくぐる。入った中は外観に応じ湾曲した通路であり、船の前後へ向かって続いている。断面は六角形で床は黒。壁面と天井は純白で、天井は照明を蔵しているらしく、それ自体発光している。
似たような構造デザインを見たことがあるが、映画館のスクリーンでハリウッドのCGだ。
意匠性の故に船なのか、はたまた必然の故に船なのか。
思わず立ち止まって見回すレムリアをセレネが促す。その歩く姿は装束のせいもあろう、歩くというよりも、浮かび飛ぶようなふわふわした動きだ。そして、どうぞ、と、通路側にセットされたドアをかちゃりと開いた。
一見したイメージは病院の個室。白一色で統一された壁と天井。ベッドがあり、奥手に小テーブル。ベッドの上には荷物が置けそうな棚板がこっちの壁からあっちの壁へ渡してある。EFMMが有する機能優先の簡易病室と構成が一致し、イメージはその故である。
ただ、その簡易病室は金属とプラスティックの〝寝られる箱〟。対しこちらには、〝居住空間〟という雰囲気が漂う。同じものなのに違いはどこから。
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(つづく)
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