アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【52】
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サンドイッチを一通り食べ終わると、舵手席左方の椅子に案内された。
そこは正面と右手に画面が一つずつ、卓内に埋め込まれ横になっている。画面に手で触れると電源が入り、寝ていた画面が立ち上がってシステム起動。
卓内にはコロコロ動くリンゴサイズのボールが埋め込まれ、ボールの傍らにタッチペン。
画面はとりあえず真っ黒で、パソコンと同じくカーソル矢印一つ。
「見ただけじゃ判らんわなぁ」
「はい判りません」
レムリアは今度はきっぱり、そして少しにっこりして答えた。
答えて気付く。いい意味での〝軽み〟がこのクルーにはある。軽妙というヤツだ。軍隊的なしゃちほこばった感じは皆無。
レムリアの微笑に応じてか、シュレーターは笑みを見せて。
「パソコンはいじるか?」
「ある程度なら」
「このボールはマウスの裏側のアレのでっかいのだ。手のひらサイズで埋め込んだだけだ。これをゴロゴロ回すと画面のカーソルが動く」
それはトラックボールと呼ばれる。このコンソールでのレムリアの仕事は、要するにレーダに映った〝気になる物〟の発見だという。画面に表示された反応物を追跡するのにトラックボールを使うのである。もちろん、それのみならず、例えば危急を捉えて駆け付けたものの、遭難者の意識が喪失して発見できない。そんな場合には人の目で探す。その場合にもこのコンソールを用い、船外カメラの向きを変える。
画面表示の説明。使用するレーダやカメラの選択方法。敵味方識別装置の呼び出しと照合方法。
シュレーターは一気に喋ったが、レムリアはほぼ掌握した。この手の暗記は日常茶飯事。なぜなら野戦病院のシステムなど同じ内容は二つと無く、都度概要から憶え直すからだ。
教えられた内容を要約して復唱し、画面に触れてみせる。
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(つづく)
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