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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【38】

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 以下原語は英語である。
「では殿下」
「はい」
 手を持たれてステップを降り、プラットホームへ。
 連なる号車の窓から一夜の舞踏会を共にした皆さん。
「ありがとうございました。おかげでとても楽しい一夜でした」
 レムリアは窓から見ている人々に王女の会釈。
 やんやの拍手。すると。
「姫様、ハロルド様。30秒お待ちいただけますか」
 ジェフ氏が言い、訊いた割には返事を待たず、Lx寝台車へとって返す。
 車端ドア脇はミニキッチンであり、お茶を淹れたりケーキをスライス程度は出来る。小窓があり、ジェフ氏がそこでアレコレしているのが見える。
「このくらいしかできませんが」
 戻ってきたジェフ氏の手には小さな花束。いや、一輪であるから〝束〟ではないか。
 ヘレボルス・オリエンタリス。純白の紙に包まれ、ピンクのリボンを巻かれた窓際の花。
「どうぞ。花はあなたが手にしてこそ相応しい」
 くすぐったい。されど。
「ありがとう」
 彼女は姫君の笑顔で小さな花を受け取った。
 花一輪。手にして降り立つ王宮の駅。
 ジェフ氏がLx寝台車乗降ステップに身を戻し、機関車に向かって手をし、機関車が短く汽笛を返して列車が流れ出す。
「さよなら~」
「お姫様、いつかまたどこかで」
「ええ、きっと」
 出会いがあれば別れがある。彼女は加速して行く列車を、人々の一人一人に目を合わせながら見送る。
 ヴィンテージな客車群を率いる新鋭のパワーエレクトロニクスが唸りを上げ、登坂路へ向け力行を開始する。列車はホームを離れ、カーブを切ってそそり立つ山の方へと向かう。その姿が見えなくなるまで彼女は手を振る。
 レールを伝って聞こえてきた、リズミカルな響きが去った。
 壁のように周囲を囲う雪の山々と、冷涼にして峻厳な空気。標高は1200メートルほど。
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(つづく)

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