アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【74】
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但し、化身となるのは月明かりの及ぶ範囲だけ。だから飛び降りれば魔法少女レムリア。
「ここから出て。階段を通って下へ」
レムリアは子ども達の手を引き案内する。他に大男の姿もあり、同様に子ども達を導く。
甲板から船内を経由し、生命保持ユニットへ。
ユニットは孤児院の庭先に展開されている。
洗浄消毒の設備を使って子ども達の汚れた身体を洗う。ちなみに、船倉内は不潔ではあったにせよ、人間だけしかいなかったせいか、洗い落とした汚れの成分から、懸念される菌やウィルスは検出されなかった。
シスターが驚きつつ、しかし思いついたように院内に取って返し、バスタオルや寄付された服を持ってきてくれる。レムリアは子ども達の水分をエアシャワーで飛ばした後、それらを羽織らせ、送り出す。
「突然すいません」
レムリアはシスターへ向かって言った。どこかの女の子の髪の毛をシュシュでまとめ、シャツを着るのもままならぬ幼い男の子にポンチョをかぶせる。
「いえ……ああ、寒いわ。子ども達は中へ入れて下さいね。少し人を呼びます。麻薬中毒とか聞きましたが?」
「はい。何も判らなくさせて拉致したものと」
「ドクターはこちらへ向かっています」
「ありがとうございます」
後から出てきた他のシスターや、手伝いに来てくれているボランティアのおばさま方、それに、孤児院の年長児であろう、子どもも何人か出てきて、22人を順次孤児院の遊戯室へ導く。
全員の消毒が終わったところで、レムリアも誘導作業に加わる。
「暖房を最強にして。パンが幾らか残っていたでしょう。あと麻薬であれば喉が渇くはず。災害避難用の水を」
「判りました」
シスターの指示と、応じる声と。
「ドクターから連絡がありました。程なく到着されるそうです」
「ありがとうございます……よかった」
報告にレムリアは思わず笑みを作って応じ、手を叩いてパチンと鳴らし、そっと目を閉じた。
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(つづく)
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