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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【72】

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 レムリアは念じながら衛星携帯電話の底面コネクタ蓋を開き、ケーブルを繋ぎ、ダイヤルメモリを呼び出し、発呼ボタンを押した。
 音はイヤホンへ回された。イヤホンマイク-船のコンピュータ-衛星携帯電話……そんな通信経路。
 だったら。
 レムリアは電話をコンソール上に投げ出して操舵室を飛び出す。
 ルルル、ルルルと呼び音を聞きながら通路を駆ける。
 電話が繋がった。掛けた先は教会付属の孤児院。
「レムリアです」
 レムリアはまず言った。階段を上り、甲板へ出る。
 金色の光のドームに囲まれて甲板はあった。マストがあり、座すアルフォンススの姿があり、件の船倉が裏返しに載っており、存在を主張している。
 中からは子ども達のうめき声。
『レム……ああ、魔女さんですか?』
 信号変換と宇宙往復のタイムラグを持って、オランダ語が返る。院長をしているシスターさんが出たようだ。
 魔法使いのレムリアで通っているので、話は通じる。
「はいそうです。人身売買組織に拉致された子ども達を救出しました。閉じこめられ汚れており麻薬中毒の疑いがあります」
『船の設備で汚れと消毒は何とかなりませんか?』
 セレネの英語。
『魔女さん何を?』
「すいませんこちらのやりとりです。人数は……」
『22人だ』
「22人です。今すぐお願いしたいのですが」
『今すぐ、ですか?』
「離脱症状の対策だけ専門家へ連絡をお願いします。後は私の方で」
『今どちらに?22人もどうやって……』
 シスターの困惑が伝わってくる。当然であろう。以前、街中でみなしごに出会い、連れて行ったことはある。
 それと同類だが人数が違う。
 しかし、説明する時間はない。理解もされまい。
 基本的に姿を隠す……その言葉をレムリアはここで思い出した。
 ただ、私は〝魔法使い〟。
『着くぞ』
 シュレーターの声に街路番地を伝える。カトリックの教会なので十字架が屋根にある。すぐ判るはず。
 程なく船が中空に静止した。
「今、真上です」
『えっ』
「風が吹きます」
. 
(つづく)

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