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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【112】

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 精神と肉体のダブルの寒さに、レムリアは羽織ったカーディガンの前を合わせる。生来基礎代謝が旺盛なのか寒さは余り感じないが、今回ばかりは胴震い。
「気にしないで。私たちの活動で誰かが罪を着るようなことがあってはなりません」
 僅かな距離ではあったが、昇降口でセレネは自らのヴェールを広げ、風雪を避けてレムリアを迎えた。
「船長、行けます」
 二人が船内通路を移動中に船が起動する。ビームが雪の中を刺し貫いて一閃し、光チューブが形成される。
「データベース照合を実施」
 レムリアが操舵室に入って最初に聞いたのは、そんな言葉。
 大画面に映っているのは、寝袋の彼を上空から捉えた、あの日の画像であった。船のデータベースから呼び出したのであろう。
「男性と認識された場合は取得して比較せよ。テレパス。彼の意識波を確認できるか」
 アルフォンススが指示を出す。言葉尻からデータベース照合とは、彼の写真と街行く人の顔を照らし合わせるということのようだ。
 しかし、東京の人口、一千万。
「西へ……」
 レムリアは自動的にまず言い、それが超能力的直感であって、しかし正解であると後から判じた。
 彼は西にいる……東京多摩地区であるから、彼女の認識は間違っていない。
「船を差し向けていただいて構いません。先日と近い場所にいると思われます」
 セレネが丁寧に指定した。不思議な認識が生じる。彼我の距離はテレパシー能力の限界を遥かに超える。しかし、確実に彼はそこにいる。
 その認識はセレネも同じようだ。能力の限界以上だが間違いない。
 テレパシーって複数人で同じものを追跡すると感度が上がるのか。
「電波望遠鏡のようですね」
 セレネは小さく微笑み、パラボラ・アンテナのイメージを送って寄越した。
 二人でイメージのパラボラを西へ向ける。
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(つづく)

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