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2013年11月14日 (木)

アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【107】

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 光の柱が天へ貫いた。
 フォトンチューブを生成すれば、村の人々にも光圧が作用する。アルフォンススはそれを良しとせず、使用を避け、ギリギリまで方策を練っていたようだが。
 結局、苦渋の断を経て安定とフォトンチューブシールドを回復し、船は光条の中を地下から空中へ飛び上がった。
 ウラン鉱脈をこの地へ露出させた大地溝帯の活動は、陥没クレーターを形成しながら、再びその鉱脈を地下深くへと引き込んで行く。
 人類が貪欲な探求心で解放した禁断の力を、大地の女神へ返すが如く。
 核施設と……村の人々もろとも。
 レムリアは感じている。自分たちが脱出できたことに、村の人たちが喜びと安堵を感じていること。その確認を持って、神の元へと人の世を離れ始めたこと。
 ちなみに、放射性物質が、地下数十キロとはいえ、大地の中に散乱したことになるが、散乱した故に臨界条件は満たさず、懸念されるような規模の核反応は生じない。それは再び掘り出されない限り、物理の法則通りに、ゆっくりと反応し、減少して行く。目の敵にされる核物質だが、そもそもは自然が生成し、大地に鉱脈を形成し、人類が発見するまでの長い時間をそこで経てきたのだ。それが今また大地に戻り、同じような長い時間をそこで過ごす。
 プルトニウム239の半減期、2万4千年。
 ウラン235、7億年。
『レムリア。大丈夫ですかレムリア』
 セレネの言葉にレムリアはイメージの視界から意識を引き抜く。船の振動は既になく、強靱に抱えていた男の腕の力も弛緩している。袋から顔を出すと、照明された通路が見える。
 団長の太い腕の中から這い出し、袋を脱ぎ捨て、仲間達を見回す。
「私は。でも、EFMMのメンバーが」
 言いながら素早く面々の腰に装備されたバイタルモニタの液晶画面をチェックする。放射線カウント数増加無し、心拍・脈拍・呼吸とも問題なし。
 総勢5名。命に別状はない。恐らくは強い震動に連続的に晒され、失神状態。
 自分は、団長の腕と身体がベルトとクッションになり、その状態にまで陥らなかった。
 更にINSを用いれば、全員の失神を防げたであろう。使用しなかったのは作用エリアが操舵室と個室のみに限定されているためであり、どうしようもなかったのだが、この結果は、それでは不十分であることを意味した。なお、INS作動中は大扉は開かない。その向こうで操舵室が高速回転している。
「出来れば病院へ」
 レムリアは言った。
『了解した。船内センサに反応はないが、メンバーに放射線障害の兆候はないか?』
 アルフォンススの言葉に一瞬、ギョッとするが。
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(つづく)

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