アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【79】
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恐らく、形而上の存在が目の前に降臨し、顕現したなら、こんな感慨を持つだろう、と思われる。しかし、ビジュアル的には、モニタの向こうでお兄さん年齢が寝そべっているだけ。
なのに何故。だがしかし。
「彼に託しましょう」
『何だって?』
船長アルフォンススが問い返す。唐突すぎる結論は流石に意表を突いたようである。
『レムリアの言う通りに。確かに彼なら大丈夫』
口添えは副長セレネ。
私たちのテレパシー回答一致。しかし共に、根拠は不明。
ビジュアルはさておき、これは間違いなく天啓託宣の類。
『了解』
アルフォンススは察したか、深くは問わなかった。
『シュレーター。眼下青年を目指して降下。クローラによる爆風に注意せよ』
『了解しました。出力を順次クローラに変換。離着陸モード』
それは青年にとって、流星が〝かくれんぼ〟した方向から風が吹き始め、すぐに、まさかと思うほど強くなるという現象であった。
青年は、はんてんの袖先で顔を覆い、それでも尚耐えきれず、風に背を向けた。
船は草むらの上に降りた。
風が収まる。青年は突然の事象に何事か呟きながら、顔を戻す。
不思議な状況がそこに出現している。白人の大男が青い服の少女を〝お姫様抱っこ〟して立っており、
その傍らには、瞳の中に星の光を蔵した、ショートカットの娘がいる。
「この子を知りませんか。ちあり・いぬかい」
レムリアは青年に向かって問うた。
「ちあり?ちありいぬかい……いぬかいちありか。待った」
青年は訝しげに応じ、すぐに気付いたように目を見開き、その携帯電話を操作した。
「この子か?」
携帯電話の画面を見せる。それは犬飼ちありという10歳の少女が行方不明というニュース記事。検索して出したのである。
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(つづく)
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