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2013年11月14日 (木)

アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【14】

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 彼女は微笑み返し。
「仰る通りです。だから我々は相応の“生きているサービス”を提供するように仰せつかっておるのです」
 機関士がレバーか何か操作して短い汽笛。
「10分前ですね」
 エミリーさんが腕時計を見て言った。
 乗車の頃合い。
「ありがとうございました。そしてよろしくお願いします」
 彼女は二人にそれぞれ顔を向けて言った。
 機関士には手を振ってウィンクを返す。
「何と丁寧なお方だろう」
 ジェフ氏が言い、彼女の荷物を手にする。
 係員同士の引き継ぎがあり、ジェフ氏の先導で2号車へ。楕円窓の下で輝く真鍮のドアノブに、氏の白い手袋が添えられ、カチャリと開かれる。
 ドアは木製の手動。このようにスチュワードが都度開閉。言うまでもなくホテルドアマンの役どころであり、そういう演出。「ホテル」但し「動く」。
「足元に気をつけて」
「ありがとう」
 背中にそっと添えられた手のひらを感じながら、2段のステップに足をかけ、車内に入る。床にはカーペット。壁はニス塗りの木製で艶やかに輝く。
 乗り込むとフッと静かになる。木とカーペットの吸音効果だ。
 これは“家”だと彼女はまず感じた。移動、ではない。居住、する空間。
 普通の列車ではない。現行国際特急の1等車ですら比較の対象ではない。
 なるほど一線を画する存在という実感が染みこむように沸いてくる。世界一の……それは喧伝される豪華さそのものだけを捉えて言った意味ではない。
 不思議と足取りがゆっくりになる。
 視界を彩る壁面の飾り窓、窓間のマーケットリ(寄せ木細工)、カーペットはトルコ絨毯。
 但し、どの装飾も、パッと見のけばけばしさを追求したモノではなく、外見同様、丸み・円に基調を置いた流れの中にある。
 個室6番。……車輛の真ん中で一番乗り心地がよい……と彼女が知ったのはずっと後の話。
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(つづく)

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