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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【127】

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 その言葉にレムリアは舌を巻いた。そして、心理学にいう代償行為の提供だと気付くと共に、そんな分析をしている自分をちょっといやだと思った。
 シスターが微笑みながら何度も頷く。ちありちゃんの言葉はキリスト教の概念に合致する内容を含むが、レムリアの知る限り日本はキリスト教国ではなく、それ以前に、無宗教に近いと認識している。道徳的概念を宗教の戒律で根拠化する必要がないからだ、と、どこかで聞いた。
「すばらしいお母様だと思いますわ」
 シスターがそっと言った。
「恐縮です。どこかの受け売りだと思うんですけどね」
 ちありちゃんは苦笑い。
「いいえ。きっと、神様がお気持ちをあなたに託されたのでしょう。えーと、わたくしもあなたのお友達になってよろしいかしら?」
「あ、シスターずるい」
「私が一番になるっ」
「こらこら、みんな一緒だから。一番も最後もないのよ。お友達カードを作って交換しましょう」
 そして、ちありちゃんが手にしたお友達カード……クレヨン書きの〝名刺〟12枚。
 欧州の早い日暮れで真っ暗になる。総出で見送られて孤児院を辞する。引き留められたが、ちありちゃんは本来寝ている時間だ。いい加減に家に帰さないとならない。
「日本時間だと?」
「午前2時」
 ちありちゃんは「わお」と目を円くして。
「夢?」
「あなたが目覚めた時、そのカードが残っているかどうか、じゃないかな?」
 レムリアはウィンク。
「また、あの船で飛んで行くの?」
「ええ、数分」
 運河の堤防を離れた船は、夕闇の一瞬を突き、人々の視界をくぐって天空へ躍り上がる。
 星の宝石箱を進むこと少々。
 時を数えれば夜明けの方が近い時刻。雪雲の去った星空は、先んじて春の様相を呈し、されど大地は一面の白銀。
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(つづく)

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