« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【104】 | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【106】 »

アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【105】

←前へ次へ→
.
『判った』
 アルフォンススは重く、引きずるような声で言った。そして。
『アルゴ発進する。但し条件を付す。前進出力最大、同時に後進出力も発生させ相殺せよ。前進加速度1G設定』
 それは前進と後進を同時に指令し、若干前進が勝る程度にせよ、の意。
 その意図は。
『光圧で大深度へ掘削する。穴掘って炉を落とせ。地上への影響を極限まで軽減する』
『了解船長!レムリア、穴掘りながらここを脱出する。INSは使用できない。衝撃に備えよ』
「判りました」
 シュレーターの注意喚起にレムリアは答え、イヤホンのピンを打った。
「姫。誰と話しているんだ?」
「リフトを動かします。手近のハンドル類につかまって下さい」
 レムリアは答えず、昇降ゲートのハンドル、隔壁のロック用レバーなどをメンバーに示した。
 各人がそれぞれつかまり、更に手と手を握り合う。
「EFMMはOKです」
『よろしい行け』
『主機関出力漸次増大』
 船がぐらぐらと前後に揺れる。前進と後進をかなりの出力で同時に掛けているので、バランスの関係で多少の振動はどうしても生じる。
「姫、地震では」
「いいえ、このリフトが動いているだけ」
『炉の滑落開始確認。炉心温度1200ケルビン。限界近い』
『船体を回転させ炉床を打ち砕け、反応済み燃料を散らせ!』
 卵の殻に穴を開け、水底にうずたかく積もっているであろう〝核ゴミ〟を光圧で飛び散らせろ。
 核反応は燃料の密度が高い方が促進され、あるレベルを越えると反応が連鎖的になって止まらなくなる。その状態を臨界という。一気に全物質が核反応を起こせば核爆発である。
『船の向きを変える。レムリア……』
 船長の声を警報音が遮る。
『異常振動検知……船長、エンジン制御ではないぞ』
 シュレーターの冷静な分析、背後の焦燥。
. 
(つづく)

|

« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【104】 | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【106】 »

小説」カテゴリの記事

小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【105】:

« アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【104】 | トップページ | アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【106】 »