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2013年11月15日 (金)

アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【117】

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 恐らく現時点、彼の心理は自分より幼い。子どもの心がピュアというなら、大人の心はその外側に色々と積もった状態。しかし今ここで見えている心は、恐らく。
 自分の、小さいけど自分の手のひらで包み、すくい上げたい。この、ぐらりと動揺するほどの衝動は、何。
「難しい言葉知ってるな」
「え!」
 レムリアは思わず大きな声を出した。ゲシュタルト、のことであろうが、口に出したわけではない。
 心に浮かべただけ。彼にテレパシーがあるようには感じないが。
〈眠りましたよ〉
 セレネからメッセージがあり、そして教えてくれる。夢という、意識だけの時間へ遷移する過程で、自分と彼とが超常的な意思疎通を行った瞬間があったのだと。だからこそ、言語の壁も存在しなかったと。
 そして、その瞬間の存在は、予知夢や既視感が生じる要因でもある。
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 携帯電話のバイブレーション。
 レムリアではない。相原学のはんてん袖の中。
 振動のせいか転がり出てきて床に落ちる。衝撃で折りたたまれた画面が開き、着信表示。
〝ちありちゃん〟
 無論、いぬかいちありちゃんのことであろう。電話越しのテレパシーは自信がないが、強い心配を寄せられているとハッキリ感じる。ちありちゃんは相原学を心配している。
 レムリアは思わず、電話を拾った。
 受話器の絵のあるボタンを押して、受信。
『あの……』
 ちありちゃんは電話の相手が違うことに気付いたようである。
「(月よ我が身に我が思う映し身を)」
 レムリアは返事の代わりに、あの日の呪文を口にした。
 ハッと息を呑む気配。
『天使さん……』
 ちありちゃんは、しかしすぐにそう応じた。
 テレビインタビューの通り、その辺りは憶えているらしい。例えば睡眠導入剤もそうだが、薬物による記憶障害は、体内濃度によっては〝途切れ途切れ〟のモードがある。そして勿論、印象に強い現象ほど、薬の作用を越えて記憶されやすい。
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(つづく)

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