アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【48】
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以上の概念を、セレネはレムリアの意識に直接送り込んだ。
すなわちテレパシーで一気に伝えた。もちろん、魔女であるレムリアもある程度の超感覚を有する。郵便物もポスト開ける前に手かざしで内容を確認できる。そんな能力者が街中に意外といることも気付いている。
ただ、ここまでクリアな伝達能力を有し、能動的に発揮する使い手に会ったのは初めてだ。
「この船は言わば現代の魔女が空飛ぶ道具です。だからごめんなさい。お送りした書状にそこまで書くわけには行きませんでした。他人様の目に触れる可能性が万が一にもありましたので」
言葉と共に、今度はイメージが織りなされる。
想定救出パターン。まずこの船が宙を舞い、超高速で現場に降り立ち、
例えば難民キャンプを襲うゲリラを男達が掃討し、けが人や置き去りの子ども達を彼女レムリアが多言語を駆使して担当する。
例えば崖から転落したクルマで意識朦朧の人を、レムリアが幻影を与えて勇気づけ、その間に男達が万難を排して救い出す。
但し自分たちの役目はそこまで。〝奇蹟〟が必要な段階を乗り越えるまで。そこまで済めば、古来〝奇蹟〟の顕現に倣い、誰かに特殊性を察知される前に姿を消す。
超高速飛行帆船と、超絶の能力を持つ人間達で、神や天使の領域だった〝奇蹟〟を、人間自身の手で起こし、命を救う国際救助ボランティア。
奇蹟を待たず、自ら起こす。それにより命を救う。
それは多分、この伝承の力を発揮する方向、目指すレベルとして、最適、最高と言って良い。
死なないように呪文を唱えろ、であれば難しいだろう。だが、その程度であれば。
失われたものを元に戻すことはできない。しかしその前に、被災者が意識あるうちに、セレネが卓越したテレパシー能力で検出し、駆け付けるというのだ。
どのくらいの速度?地球の裏側まで6秒で。
……6秒!?
地球一回り確か4万キロ。
「もちろん、私の能力には限界がありますし、同時に起こっている全部を担うことはできません。でも、出来る限りの全てを用いるのが、人間としてあるべき姿のはずです」
プロジェクトは、後は、自分が加わるだけ。
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(つづく)
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