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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【82】

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 一昨日までと変わらないし、実際いつも通りだが。
 なんだか別世界のコピーに来たような感覚。
 余りにも、余りにも短時間に多くの出来事が起こりすぎ。
 そして、その間に、自分が変わってしまった。
 シャワーを浴びてトーストを口にくわえ、オーラ・ノートとアマトールに歌わせる。
 紅茶をいつもの手順で淹れて落ち着く。のつもりだが、遠足前日の幼児のように落ち着かない。
 いつもと同じ物を見ているがやはり違う。今の自分にはアルゴ・ムーンライト・プロジェクト監視員にして専属看護師という肩書きが付いて戻った。
 世界を3周し、地球儀裏側の海に、日本に降りたのは夢かまことか。
 子ども達の姿と共に思い出したこと一つ。船で消毒する際、一人ひとり顔写真を撮影、行方不明者データベースに検索を掛けたのだ。その結果をメールでパソコンに送ってくれる手はずになっている。EFMMサイドで当該国の組織につながりがあれば、自分が付き添って帰すことが出来るからだ。
 やはり夢ではないのだ。そして、だから、この部屋は、昨日までと同じだが違う。
 ノートパソコンをベッドの下から持ち出して電源を入れ、ネットワークのケーブルを繋ぐ。
 システムの起動の間にテーブルに載せ、メールチェック。スパムが100。フィルタで削除。発信ドメイン名コルキスが1つ。件のメール。
 開くと、データベースが添付されており、子ども達22人の国籍がズラリとリストされていた。いぬかい・ちありちゃんはサイタマ・プリフェクチュア。後は土地柄東南アジア系の子が多い。タイ、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナム、インドネシア。
 〝彼らはその後摘発されたようです。国際ニュースサイトに現代の奴隷商人摘発とあります〟
 字面から受けるイメージはセレネの言葉である。リンク先のサイトを覗くと、確かに船から見たのと同じ〝犯人〟の写真が載っている。当局の逮捕に抵抗もせずおとなしく従ったという。その理由に曰く、
『海の中から神が船に乗って現れた。だから我々は観念した』
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(つづく)

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