アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【23】
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「お集まりの紳士淑女の皆さん」
ジェフ氏がピアノの傍らからサロン室内に声を出した。
ソファで寛ぐ紳士淑女の目が集まる。
無粋な邪魔というよりは、イベントへの期待……そんな目線。
「往事、この列車は多くの王侯にご利用いただき、その必要の故にこのような姿となりました。その後、時と共に翼が発達、このサロンに開いた花々もことごとく空の上へと奪い去られました。しかし今夜は違います。恐らくはこの月明かりの魔法でございましょう、我々はそんな華やかな花を一輪、空から奪い返すことに成功しました。
この方を皆さんに紹介できます栄に浴したことは、私にとって終生の誇りであると共に、一晩の旅路をご一緒いただけることは、我々共通の栄誉でありましょう。
では歓迎の言葉を捧げ、皆様にご紹介いたしたいと思います。この列車は今宵貴女様をお待ち申し上げていたと言っても過言ではありますまい。中世以後魔女の国として知られたこの旅路遙か彼方、アルフェラッツ王国の姫君、メディア・ボレアリス・アルフェラッツ王女殿下」
ジェフ氏が言いながら差し伸べた白い手袋の手に、彼女は右手を載せ、左手でドレスの裾を持ち上げた。
はにかみを持ってサロン車に足を踏み入れる。
わぁ、という声が一斉に上がり、ソファの客が立ち上がり、拍手の波が広がる。
彼女の名、メディア・ボレアリス・アルフェラッツ。
意味するところ、代々女系で〝魔女〟の血を継ぐとされるアルフェラッツ王国のプリンセス。称号、極光の花冠。
コルキスの女王様から直接手紙が届いた。それは至極当たり前なのである。
レムリア……この場だけは王女メディアと書こう、彼女は歓迎に会釈しながら光の中へ。
正装……クローゼットから彼女が選んできたその正体は深いブルーのイブニングドレス。
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(つづく)
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